銀歯は保険適用の補綴物であり、虫歯を治療したときには真っ先に使用が検討されるケースが多いです。
また費用が安いことは患者さんにとって大きなメリットですが、銀歯には熱伝導率が高いという特徴があります。
今回は、熱伝導率の概要、銀歯の熱伝導率が高いことによるデメリットなどについて解説します。
熱伝導率の概要
熱伝導率は、物質における熱の伝えやすさを表す値です。
物質がそれぞれ持っている値であるため、厚みは一切関係ありません。
例えば歯を削る量が多いと少ない場合があったとしても、使用している素材が同じであれば熱伝導率も同じです。
また熱伝導率が高いほど、物質内を熱が伝わりやすくなり、熱さだけでなく冷たさも感じやすくなります。
ちなみに金属の中では、銀>銅>金>アルミニウムの順に高い熱伝導率を持っています。
銀歯の熱伝導率が高いことによるデメリット
前述の通り、銀は非常に高い熱伝導率を持っています。
こちらは当然、銀でつくられている銀歯にも言えることであり、熱伝導率が高いと歯がしみやすくなるというデメリットにつながります。
熱伝導率が高いということは、食べ物や飲み物の温度を歯の内部に伝えやすいと言うことを意味しています。
そのため、神経がある歯で治療を行った場合、銀歯の近くにある際に刺激が伝わりやすく、痛みを生じやすくなります。
このときの痛みは知覚過敏の症状に酷似したものであり、発症するとさまざまな問題を引き起こします。
まず、銀歯がしみる場合はブラッシングが十分にできません。
歯ブラシが当たることによる刺激で痛みが生じるからです。
もちろん、ブラッシングが不十分だと食べカスやプラークが口内に残り、虫歯や歯周病を発症するリスクは高まります。
また食べ物をしっかり噛めないこともデメリットです。
熱伝導率の高い銀歯が痛み出すと、ものを十分に噛むことができません。
このことから、食生活の偏りや片噛み癖といった悪習慣につながることが考えられます。
ちなみに片噛み癖は顎関節への負担を大きくし、顎関節症を引き起こす原因にもなりかねません。
銀歯の痛みは治療直後に強くなる傾向にある
過去に虫歯治療を行ったことがある方の中には、虫歯を治療したばかりにもかかわらず、治療箇所に痛みが出るという現象を経験した方もいるでしょう。
こちらは、一時的に神経が過敏になっていることが原因です。
歯の神経は、熱の刺激から歯を守るために、新たな象牙質をつくり出します。
しかし、象牙質の形成にはある程度の時間がかかるため、熱伝導率が高い銀歯は装着直後の痛みが強くなりやすいです。
ただし、虫歯治療で銀歯を装着した直後の痛みは、数日程度で消えるケースがほとんどです。
治療から数週間、もしくは数ヶ月経過してもまだ痛みが引かないという場合、他にトラブルが生じている可能性があるため、早急に歯科クリニックに相談しましょう。
銀歯がしみる場合の主な対処法
熱伝導率の高い銀歯がしみるという場合は、銀歯を別の補綴物に交換するという方法が有効です。
具体的には、セラミックやジルコニアなどの素材に変更することで、痛みが抑えられる可能性があります。
セラミックやジルコニアは、銀歯と比べて熱伝導率が低いです。
そのため、食事の際には温度による悪影響を受けにくいという特徴があります。
またこれらの素材は、銀歯と違って変形しにくい素材です。
補綴物が変形すると、噛み合わせが悪くなって痛みを生じることがありますが、セラミックやジルコニアはこのような不安も少ないです。
さらに変形しにくい素材である場合、補綴物と歯との間に隙間ができにくくなり、虫歯のリスクも軽減できます。
虫歯を発症した場合、歯がしみる可能性は極めて高いため、そのリスクを根本からなくすためにセラミック素材に変更することは有効です。
セラミックの熱伝導率に関する注意点
セラミックやジルコニアなどの素材は、銀歯に比べて熱伝導率が低く、痛みを感じにくいという話をしました。
しかし熱伝導率が低いことはメリットばかりなのかというと、決してそういうわけではありません。
セラミックは熱伝導率が低く、食事をしても知覚過敏が起こりにくいですが、その反面熱に弱いです。
具体的には、熱伝導率が低いことによって熱の拡散が遅くなるという仕組みです。
また熱に弱いことによって生じるデメリットとしては、破損しやすくなることが挙げられます。
銀歯は硬度が高く熱伝導率も高いため、簡単に破損することはありませんが、セラミックは食事内容などによって素材そのものが破損するリスクが高まる傾向にあります。
まとめ
銀歯は食事の熱を伝えやすく、それによって日常生活の快適性に支障が出ることも考えられます。
虫歯治療後は、特に何も考えず銀歯を選択するという方も多いですが、選択する場合は上記のようなデメリットを把握しておかなければいけません。
もちろん熱伝導率が高いことによる問題が生じたときは、そのまま銀歯を使い続けることなく、歯科医師に相談することをおすすめします。