虫歯は治療を受けない限り基本的には治らない疾患であり、進行するとその影響は全身に広がります。
また虫歯が引き起こすものの一つに、メタボリックドミノというものが挙げられます。
こちらは、最終的におそろしい身体の状態を引き起こす現象です。
今回は、メタボリックドミノと虫歯の関係性を中心に解説します。
メタボリックドミノの概要
メタボリックドミノは、身体がメタボリックシンドロームの状態になり、最終的に重篤な臓器疾患などに至る一連の病態です。
メタボリックシンドロームは高血圧や高血糖、脂質異常という危険因子が連鎖したもので、内臓脂肪症候群とも呼ばれます。
メタボリックドミノについては、慶応義塾大学の教授が2003年に提唱したものです。
この過程を食い止めるには、肥満の予防や改善だけでなく、さらにその上流にある不適切な生活習慣を改善することも重要とされています。
メタボリックドミノと虫歯の関係性
メタボリックドミノは、ドミノが倒れていくように、さまざまな症状が次々に現れることが名前の由来です。
虫歯については、このドミノが倒れる最初の1枚に含まれます。
具体的には、まず虫歯や歯周病、過食や運動不足といった生活習慣の乱れが引き金になります。
その後、生活習慣の乱れによって内臓脂肪が蓄積し、肥満になります。
また内臓脂肪から出る悪いホルモンの影響により、高血圧や高血糖、脂質異常といった危険因子が複合的に発生・進行します。
これがメタボリックシンドロームの状態です。
さらに危険因子が重なることで、動脈硬化が進行し、心臓や脳、腎臓などの臓器に障害が起こり始めます。
つまり、虫歯を予防することができれば、ここまで重篤な症状にはつながらない可能性が高いということです。
虫歯の放置がメタボリックドミノを引き起こす
メタボリックシンドローム自体は、ほとんど自覚症状がありません。
特に痛みなどが出るわけではないため、ついつい放置してしまいがちになり、気付いたときには動脈硬化を急速に進め、疾患を引き起こす原因になります。
一方、虫歯はある程度症状が進行している場合、強い痛みにおそわれます。
特に神経にまで到達しているような虫歯は、何もしていなくても激痛を覚える可能性が高いです。
もちろん、この段階になるまでに治療できれば良いのですが、中には痛みがあるにもかかわらず虫歯を放置する方もいます。
メタボリックシンドロームに自覚症状がない分、虫歯の段階で治療できていれば、メタボリックドミノは防げる可能性が高いです。
つまり、虫歯を放置するのは非常にもったいないということです。
メタボリックドミノが引き起こす致命的な合併症
虫歯などが原因で引き起こされるメタボリックドミノは、最終的に致命的な合併症をいくつも引き起こします。
主な合併症としては、以下のものが挙げられます。
・脳卒中
・失明
・下肢切断
・認知症
各項目について詳しく説明します。
脳卒中
メタボリックドミノの最終段階の一つに、脳卒中があります。
メタボリックシンドロームによる動脈硬化の進行は、脳の血管にも影響を与え、脳梗塞や脳出血を引き起こすリスクを高めます。
また脳卒中を発症すると、手足の麻痺や言語障害、高次脳機能障害や感覚障害、嚥下障害などさまざまな後遺症が見られるようになります。
失明
虫歯から端を発したメタボリックドミノにより、視力を失ってしまうことも考えられます。
メタボリックシンドロームの状態が続くと、糖尿病も発症しやすくなります。
進行した糖尿病によって血糖値が高い状態が続くと、目の網膜の血管がダメージを受け、糖尿病性網膜腫を発症します。
糖尿病性網膜症は、初期は自覚症状が少ないものの、進行すると網膜の血管が破れて出血したり、網膜剥離を起こしたりして、失明に至る可能性があります。
下肢切断
メタボリックドミノは、下肢切断のリスクも高めます。
下肢切断は、骨盤から先の足の一部を切断する手術です。
メタボリックシンドロームによる動脈硬化が進行すると、足の動脈が狭くなったり、詰まったりします。
これにより、血流が悪くなり、足の痛みや壊死を引き起こす閉塞性動脈硬化症につながります。
閉塞性動脈硬化症を引き起こした部分については、切断しなければいけない可能性が高いです。
認知症
メタボリックシンドロームの状態の方は、アルツハイマー型認知症の進行が早まることが報告されています。
こちらは、メタボリックシンドロームが神経の保護作用を弱めたり、脳細胞に悪影響を与えたりするためと考えられています。
特に中年期のメタボリックシンドロームは、将来的な認知症の発症リスクを高めます。
まとめ
メタボリックシンドローム自体は、多くの方がご存知の症状かと思います。
しかし、それがあらゆる疾患を引き起こすメタボリックドミノについては、それほど広く認知されていません。
また虫歯や歯周病がメタボリックドミノの入口になることについても、知らなかったという方は多いでしょう。
命を脅かすような症状につながる前に、しっかりセルフケアは行わなければいけません。