歯科クリニックで虫歯治療を受ける場合、100%成功すると考えている患者さんは少なくないかと思います。
しかし、実際は歯科医師も人間であるため、完全に失敗するリスクを排除するのは難しいと言えます。
今回は、虫歯治療における失敗の主な原因について解説します。
検査、診断の不足
治療前の検査や診断が不十分な場合、虫歯の進行度や範囲、歯根の形状などを正確に把握できず、不適切な治療計画につながる可能性があります。
治療計画の説明不足、不備
患者さんへの十分な説明と同意(インフォームド・コンセント)が行われていない場合、患者さんの理解不足や想定と異なる結果、トラブルに発展することがあります。
治療部位の取り違え
治療部位の取り違えは、抜歯する歯や治療する部位を間違えるという、もっとも基本的な確認ミスです。
思い込みや確認不足が原因となりますが、ある程度の実績を持つ歯科クリニックでは、通常このような失敗は起こりません。
不十分な虫歯の除去
虫歯に侵された部分を完全に除去しきれていない場合、治療後に内部で再び虫歯が進行(二次虫歯)する原因となります。
後述する根管治療では、腕のある歯科医師であってもこのような失敗が起こりやすくなります。
詰め物、被せ物の適合不良
詰め物や被せ物が歯に正確に適合していないと、ミクロの段差や隙間から虫歯菌が侵入し、こちらも二次虫歯や脱落の原因となります。
特に銀歯やレジンといった保険診療の補綴物では、歯との隙間ができやすくなります。
健康な歯質の過剰切削
例えばセラミック治療などでは、セラミックにある程度の厚みを持たせるために、天然歯を削らなければいけません。
しかし必要以上に健康な歯質を削ってしまうと、歯が弱くなったり、神経にダメージを与えてしまったりすることがあります。
神経へのダメージ
切削時の刺激や、虫歯が深すぎた場合などに、治療が原因で歯髄炎や神経の壊死を引き起こすことがあります。
根管治療の技術的難易度と失敗
重度の虫歯には、根管治療が適用されることがあります。
また根管(歯の神経が入っている管)の形は複雑で内部が見えにくいため、治療が難しく、細菌の除去不足や薬の充填不足により失敗することがあります。
ちなみに保険診療の根管治療の場合、プロフェッショナルである歯科医師でも、治療の成功率は50%に満たないと言われています。
治療中の異物誤飲、誤嚥
治療器具や詰め物などの小さな異物を、患者さんが誤って飲み込んだり気管に入れたりする事故が発生することがあります。
こちらが発生した場合、当然虫歯治療は即中止されます。
使用機器の破損や接続不良
虫歯治療中に歯科用機器の一部が破損して口腔内に落下したり、ガス管などの接続ミスにより事故につながったりすることがあります。
麻酔時の合併症や過失
麻酔薬の量や投与方法の間違い、静脈内鎮静法などにおける患者さんの全身状態の急変への対応遅れなどが、重大な事故につながることがあります。
衛生管理の不徹底
歯科クリニックによる器具の滅菌消毒が不十分な場合、患者さんの間での交差感染を引き起こすリスクがあります。
歯科医師の経験不足、技術不足
単純に、歯科医師の経験不足や技術不足が失敗を招くケースもあります。
例えば、特定の難しい症例に対する経験や技術が不足している歯科医師が治療を行う場合などは、ミスのリスクが高まります。
連携・情報共有の不足
歯科クリニックにおいて、複数のスタッフ(歯科医師、歯科衛生士、助手など)間での情報共有や連携が不十分な場合、確認ミスや手順の誤りが生じやすくなります。
患者さんの要因
虫歯治療後も、ブラッシング不十分な部位にはプラークが溜まりやすく、新たな虫歯や治療済み箇所の再発のリスクが高まります。
また治療途中で通院をやめてしまうと、治療が完了していない部分から細菌が侵入し、感染が進行して失敗につながることがあります。
痛みがなくなっても、医師の指示通りに治療を終えることが重要です。
さらに、糖分の多い飲食物を頻繁に摂取するなどの食習慣は、虫歯の発生リスクを高め、治療効果を低下させる可能性があります。
その他、強い噛む力は、詰め物や被せ物に微細なひび割れや隙間を生じさせることがあり、そこから細菌が侵入して二次カリエスの原因となります。
ちなみに、治療後のメンテナンスや定期検診を怠ると、詰め物・被せ物の劣化や新たな虫歯の初期段階を発見できず、結果として治療の失敗につながります。
そのため、虫歯が完治した後も、3ヶ月に1回程度は歯科クリニックを訪れなければいけません。
まとめ
虫歯治療を受けることは簡単ですが、大切なのは最後まで問題なく完了させ、二次虫歯も発症させないことです。
またそのためには、患者さん自身で治療中や治療後のケアを行い、なおかつ信頼できる歯科クリニックを選ぶ必要があります。
多くの歯科クリニックでは、患者さんが期待しているような結果を得られますが、杜撰な治療が行われる可能性もゼロではないため、注意してください。
