”虫歯は歯の病気“というイメージを持っている方は多いかと思いますが、実際はそうとは限りません。
間接的に重篤な疾患を引き起こす可能性があるのが、虫歯の怖いところです。
また虫歯によって発症する重篤な疾患の一つに、脳梗塞が挙げられます。
今回は、虫歯と脳梗塞の関係を中心に解説します。
脳梗塞の概要
脳梗塞は、脳の血管が詰まることで血液が途絶え、脳細胞が酸素や栄養不足で死んでしまう疾患です。
脳卒中の一種で、日本でもっとも多い脳卒中の種類としても知られています。
脳梗塞の症状としては、詰まった血管の場所や範囲によって異なりますが、一般的には運動麻痺や感覚障害、言語障害などが挙げられます。
運動麻痺や手足の動かしにくさ、感覚障害は手足や顔の感覚の鈍化、言語障害は言葉が出にくいといった症状を指しています。
また視界の一部が欠けるなどの視覚障害や意識障害、めまいやふらつきなどが現れることもあります。
ちなみに脳梗塞は、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症の3つにわかれます。
ラクナ梗塞は、脳の奥にある細い血管が詰まるタイプで、症状が一切出ないこともあります。
アテローム血栓性脳梗塞は、脳の太い血管動脈硬化によって狭くなり、血栓が詰まるタイプです。
心原性脳塞栓症は、心臓でできた血栓が脳の血管に詰まるもので、心房細動などの不整脈が原因となることが多いです。
虫歯と脳梗塞の関係について
虫歯を放置していても、基本的には自然に治ることがありません。
特に歯に穴を開けるほど進行している場合、必ず歯科クリニックで歯を削る必要があります。
また虫歯が進行すると、虫歯菌が血管に入り込み、全身を巡ることがあります。
このとき、虫歯菌が血管に炎症を引き起こし、動脈硬化を進行させることも考えられます。
さらに動脈硬化が進むと、血管が狭くなって血栓ができやすくなり、血栓が脳の血管を詰まらせると脳梗塞を引き起こすことがあります。
つまり虫歯があるにもかかわらず放置している方は、知らず知らずのうちに脳梗塞のリスクを高めてしまっているということです。
ちなみに、虫歯だけでなく歯周病もまた、脳梗塞を引き起こす可能性のある疾患です。
歯周病によって血管が炎症を起こすと、同じように動脈硬化を引き起こすことがあります。
虫歯と歯周病はセットで発症することも多く、これら両方を患っている方はさらに脳梗塞のリスクが高まります。
歯周病については、虫歯以上にさまざまな全身疾患との関連性が深いことで知られているため、特に注意しなければいけません。
虫歯が引き起こすその他の脳疾患について
虫歯は脳梗塞だけでなく、他にもさまざまな脳疾患の原因になることがあります。
具体的には脳炎や脳腫瘍、脳出血や認知症などです。
虫歯菌が脳に感染すると、脳炎や脳腫瘍につながる可能性があります。
これらの疾患は頭痛や発熱、意識障害や痙攣などの症状を引き起こし、重篤な場合は後遺症が残ることもあります。
また虫歯菌が血管壁のコラーゲンと結合して止血作用を妨げたり、血管を脆くしたりすることで、脳出血を起こすことも考えられます。
さらに虫歯菌は脳内で出血を引き起こし、認知症患者の脳内で同じような出血が確認されていることから、認知症との関連性が指摘されています。
ちなみにある研究では、虫歯菌を保有している方は、認知機能テストの結果が良くない傾向にあることが示されています。
虫歯による脳梗塞の予防法
虫歯が原因の脳梗塞を予防するには、とにかく虫歯そのものを予防するしかありません。
虫歯は早めに治療することで、菌が血管に入るのを防ぐことができます。
ただし、患者さん自身が発症に気付くのは、痛みが出始めてからというケースが多いです。
虫歯は痛みがなくても発症している可能性があるため、定期的に歯科クリニックで検診を受け、早期発見・早期治療を目指しましょう。
また自宅でのセルフケアでは、歯ブラシやデンタルフロス、歯間ブラシなどを使用して丁寧にブラッシングをし、虫歯菌を減らすことが重要です。
さらに糖分の多い食品、歯に残りやすい食品を極力避け、バランスの取れた食事を心掛けなければいけません。
もし脳梗塞を発症してしまったら、それこそ治療は早急に行うことが求められます。
一刻を争う疾患であるため、症状が出たらすぐに救急車を呼び、医療機関を受診してください。
ちなみに脳梗塞の治療には、tPA静脈注射療法や血管内治療などがあります。
tPA静脈注射療法は、発症から4.5時間以内の場合に採用される治療法で、血栓を溶かす薬を静脈に注射します。
血管内治療は、脳梗塞の発症から6~8時間以内の場合、カテーテルを使って血栓を取り除くために行われる治療です。
まとめ
虫歯を放置することに対し、せいぜい歯を失うことくらいしか想定していない方もいるかと思います。
しかし、実際はそれよりも恐ろしい疾患を引き起こし、命を落としてしまう可能性もあります。
そのため、どれだけ小さな虫歯であっても、放置せずに必ず治療しなければいけません。
もちろん虫歯が進行している方は、今すぐにでも歯科クリニックの予約を取るべきです。