虫歯はたとえ軽度であっても、発症していれば歯科クリニックで診てもらわなければいけません。
もちろん歯に穴が開いている場合は、歯科クリニックで治療を受け、補綴物を装着する必要があります。
しかし、中には虫歯治療を受けるのが困難な状況の方もいます。
今回はどのような状況が当てはまるのかについて解説します。
虫歯治療が困難な状況4選
以下の状況に該当する方は、適切な虫歯治療が困難になることがあります。
・叢生
・ドライマウス
・二次虫歯
・不規則な食習慣
各項目について詳しく説明します。
叢生
歯並びが複雑に重なり合っている叢生は、現代人においてもっとも一般的な“虫歯予防が困難な状況”の一つです。
物理的に歯ブラシの毛先が届かない死角が生まれるため、どれほど時間をかけて磨いても、理論上の清掃効率が著しく低下します。
特に歯が前後に重なっている部分は、通常のブラッシングでは毛先が表面を通り過ぎるだけで、隙間に詰まったプラークには一切触れられないことも珍しくありません。
プラークは24時間~48時間で成熟し、酸を出し始めてエナメル質を溶かします。
叢生がある箇所では、この成熟したプラークが数週間、数ヶ月単位で滞留することもあり、気づいた時には隣接面から深く進行した虫歯が見つかるケースが後を絶ちません。
ドライマウス
唾液には、私たちの想像を遥かに超える強力な虫歯予防機能が備わっています。
具体的には酸性に傾いた口内を中和する緩衝能、溶け出した歯の成分を補う再石灰化作用、細菌を洗い流す自浄作用、そして抗菌成分による細菌繁殖の抑制です。
ドライマウスによって唾液が減少するということは、これらの天然の防御バリアがすべて失われることを意味します。
この状況下では、通常であれば虫歯にならないような軽微な食生活の乱れであっても、一気に重症化を招く極めて危険な状態となります。
また、ドライマウスの原因は多岐にわたります。
加齢による腺機能の低下、ストレスによる自律神経の乱れだけでなく、現代では降圧剤、抗うつ薬、花粉症の薬といった一般的な内服薬の副作用として現れることが多いです。
唾液が少なくなると、口の中は常に酸性に傾きやすくなり、本来なら唾液が洗い流してくれるはずの食べカスが歯の表面に強固にへばりつきます。
このような状況では、通常のブラッシングだけでは追いつきません。
二次虫歯
一度虫歯治療を行い、銀歯やレジンで修復した歯は、実は健康な歯よりも格段に虫歯リスクが高まっています。
これを二次虫歯と呼びますが、修復物と自分の歯の境界、細菌にとっては絶好の侵入経路となります。
どれだけ精密に作られた被せ物であっても、ミクロン単位の段差や隙間は必ず存在し、経年劣化によって接着剤が溶け出せば、その隙間はさらに拡大します。
二次虫歯の最大の難しさは、その見えにくさと進行の早さにあります。
被せ物の下で虫歯が進行するため、外側から鏡で見ても異変に気づくことは困難です。
多くの場合、痛みが出て受診した時には、すでに被せ物の中がスカスカの状態になっており、神経まで到達していたり、最悪の場合は抜歯を余儀なくされたりします。
特に神経を抜いた歯に被せ物をしている場合、痛みという重要な警告サインが失われているため、自覚症状がないまま破壊が進むという最悪のシナリオを辿ります。
不規則な食習慣
虫歯予防の成否を分けるのは、砂糖の摂取量そのものよりも、実は口の中に糖分がある時間の長さです。
私たちの口内では、飲食のたびにプラーク中の細菌が酸を作り、歯のエナメル質を溶かす脱灰が起こります。
その後、20分~40分ほどかけて唾液が酸を中和し、歯を修復する再石灰化が行われます。
しかし、仕事中に少しずつ飴を舐めたり、糖分の入ったコーヒーを飲み続けたりするダラダラ食べ・飲みの状況では、このサイクルが完全に破壊されます。
絶え間なく糖分が供給されると、口内は常に酸性の状態に保たれ、再石灰化の時間が一切与えられません。
こうなると、どれだけ丁寧にブラッシングをしても、磨いている時間以外はずっと歯が溶け続けていることになります。
特にデスクワークや深夜までの作業、あるいはストレス解消として頻繁に間食を挟む生活スタイルは、本人の自覚がないまま歯を限界まで追い込みます。
この状況を改善するには、単なる磨き方の指導ではなく、ライフスタイルそのものの変容が必要です。
しかし、仕事の習慣や長年の嗜好品を変えることは容易ではなく、心理的なハードルも非常に高くなります。
また、スポーツドリンクや健康に良さそうなスムージーなども、実は高い糖分と酸を含んでいて、健康意識が高い層が知らないうちに虫歯を誘発しているケースも少なくありません。
まとめ
冒頭で触れた通り、虫歯治療を受ければ虫歯の症状は改善されます。
しかし、患者さんの口内状況や生活習慣などに問題がある場合、適切な虫歯治療を受けても効果が半減することがあります。
また歯科クリニックにおいても、前述したような状況下での虫歯治療は、推奨されないことが多いです。
虫歯治療を受けつつ、他の疾患があるのであればそちらも改善し、生活習慣も適切なものにしましょう。