歯科医院で治療をする際は、治療箇所を把握するため、レントゲン撮影などを行います。
ただし、インプラント治療の場合はレントゲンではなく、CT撮影が必要です。
なぜ、インプラント治療ではCT撮影が必要なのでしょうか?
CT撮影の必要性と、撮影を拒否した場合のリスクについて解説します。
CT撮影はなぜ必要?
インプラント治療を受けるときは、最初に歯科用CTで撮影を行います。
CTとはComputed Tomographyの頭文字をつなげた用語です。
一般の病院で使用されるCTは体を輪切りにしたような断面の撮影ができます。
歯科用CTも、口周辺を断面図のようにして撮影できます。
撮影の方法はレントゲンと同じくX線によるものですが、コンピューターで処理することにより、次元的に構築されるのです。
一般の病院で使用される医療用CTと、歯科医院で使用される歯科用CTの仕組みは、特に変わりません。
ただし、機械のサイズと、撮影される範囲に違いがあります。
なぜインプラント治療の際にCTによる撮影が必要なのかというと、インプラント治療には治療箇所の立体的なデータが必要となるからです。
レントゲンの平面の撮影ではわからない部分を正確に把握するためにも必要なのです。
インプラント治療では、歯茎の奥にある骨に穴をあけてインプラント体を埋入し、骨と結合させて固定します。
しかし、埋め込む骨の幅や高さがわからなければ、埋め込むことができるどうか判断ができません。
骨に十分な高さや幅があればいいのですが、足りない場合には骨を増やす治療が必要になります。
また、インプラントのサイズを決めることもできません。
骨の幅によってインプラント体の直径が、また、高さによって長さが決まります。
十分な幅がなければ歯茎からはみ出してしまう恐れがあります。
また、高さが足りない場合は上顎洞に飛び出してしまったり、下顎の神経を傷つけてしまったりすることもあるのです。
インプラントの上部構造である人工歯を被せるときは、治療箇所の両脇の歯との距離がどのくらいあるのか確認しなければなりません。
両脇の歯との隙間がない場合には、将来的に歯が痛み出す可能性があります。
レントゲンではわからないような、骨の陥没や欠損などがある場合も、CT撮影であれば確認できます。
骨に異常があると、インプラントは埋入できません。
レントゲンの場合はあくまでも平面上の写真であり、全体を把握できないこともあります。
しかし、CTであれば、隅々まで詳細にチェックできるでしょう。
骨の長さを把握したい場合は、パノラマレントゲンによる撮影でも把握することが可能です。
また、虫歯や歯周病がないかもチェックしなくてはならないので、CTとレントゲンを併用して撮影する必要があります。
CT撮影をしない場合のリスク
インプラント治療が始まったのは1960年代です。
一般に広まったのは誕生から20年ほど経過してからですが、当初、歯科用CTはかなり珍しいものでした。
CTがない時代は、レントゲンで確認するしかなかったのです。
当時、インプラント治療が可能かどうかを判断するのに重要だったのが、歯科医師の経験でした。
経験に基づいて判断し、肉眼で確認するのが精いっぱいだったのです。
治療を始める前の検査でも、得られる情報が今とはかなり違います。
経験が必要だったため、インプラント治療ができるのは一部の経験豊富な歯科医師だけでした。
かつては経験に頼る部分の大きかったインプラント治療ですが、CT撮影が可能になった現在では、歯や骨の状態を正しく把握したうえで適切な治療方針を決めて行うことができます。
CT撮影はインプラント治療において重要な役割を担いますが、もしもそれを拒否した場合は、噛み合わせに支障をきたす恐れがあります。
噛み合わせが悪いと、食べ物を十分に細かくできないまま飲み込んでしまうため、胃腸への負担が大きくなります。
また、うまく噛めないからと、柔らかいものばかりを食べるようになる可能性もあります。
嚙み合わせが悪いと、左右のバランスも崩れやすくなり、顎にも均等に負担がかからなくなってしまいます。
その結果、口を開けた時に音が鳴るようになったり開けにくくなったりして、やがて顎関節症になるかもしれません。
さらには、噛むことに関連する筋肉にも悪影響を及ぼします。
筋肉のバランスが崩れることで、片頭痛や肩こりなどの原因になってしまうのです。
以上のとおり、CT撮影を拒否することで嚙み合わせに問題が生じ、全身への悪影響が現れるかもしれません。
このようなリスクを少しでも減らすためには、きちんとCT撮影を受けてからインプラント治療を受けることが大切です。
まとめ
インプラント治療を選択したとき、歯科用CTによる撮影を行う必要があります。
CTによる撮影をすることで、口内の状況を詳細に確認し、インプラント治療を安全に進めることができるのです。
CT撮影は必ず行う必要があるため、拒否せずにきちんと説明を聞いてください。
カウンセリングの時に、疑問がある場合は説明してもらいましょう。