
歯の中心にある、神経や血管がある組織を歯髄といいますが、歯髄まで虫歯が進行すると歯髄炎になってしまいます。
歯髄の状態を検査する方法はいくつかあり、電気診も方法の1つです。
虫歯治療に用いられる電気診とは、どのような検査方法でしょうか?
電気診について、解説します。
電気診とは?
歯の構造は、もっとも外側にエナメル質でできた層があり、内側には象牙質でできた層、中心部には歯髄という組織があります。
歯髄には神経や血管が集まっていて、虫歯の治療をする際に神経を抜く場合は、歯髄を除去する抜髄を行うのです。
虫歯は、歯の外側から徐々に溶かしていきますが、虫歯が進行すると歯髄まで感染することになります。
歯髄が虫歯に感染してしまうと激しい痛みが生じますが、そのまま放置していると神経が死んでしまうため、痛みを感じなくなるでしょう。
痛みが治まったとき、歯髄が死んでしまったのか、もしくは治療をして虫歯の原因菌を追い出すべきかの判断を下すのは、自分では困難です。
そのため、歯科医院で診てもらわなければなりません。
歯髄が生きているかどうかを歯科医師が判断する方法の1つに電気診がありますが、どのような検査方法でしょうか?
電気診は、電気歯髄診断機を使用して歯に弱い電気を流すことで刺激を与え、歯髄神経が痛みや違和感を誘発するかどうかを調べることで、歯髄の状態を調べます。
歯髄電気診とも呼ばれる方法ですが、最大のメリットといえるのは診断精度が高く、歯髄を損傷しないということでしょう。
電気診で歯髄の状態が十分にわからなかった場合、さらに詳しく診査することはできません。
電気診は血流の測定はできないため、さらに精度を求めるのは困難です。
歯髄電気診に対して歯髄が正常域で反応した場合は、歯髄が生きていることの証にはなりますが、歯髄が正常であるということの証明にはなりません。
また、いくつかのケースでは偽反応を示すこともあるため、正常な判断をするために細心の注意を払わなければならないのです。
偽反応を示すケースとして、修復した象牙質が非常に多いために、電気による刺激が歯髄まで達しないケースが挙げられます。
また、電気の刺激が歯の歯根膜まで届いてしまったり、隣の歯に刺激が届いていたりする場合も、偽反応を示すかもしれません。
また、外傷の既往があり、鎮痛剤などを服用している場合も、偽反応を示してしまうことがあります。
さらに、大きな金属修復物がある場合には歯肉へと電気が流れてしまうため、正確な診査を行うことは困難です。
つまり、歯髄の生死をより正確に診査するためには電気診だけではなく、各種診査を併用する必要があるのです。
歯髄の神経線維
電気診で電気的刺激を与えるのは、主に歯髄の中の神経線維ですが、神経線維とはどのようなものでしょうか?
歯髄に分布する神経線維には、有髄のA線維と無髄のC線維がありますが、象牙質の痛みに関与しているのは伝導速度が速いAδ線維と言われています。
上記のような神経線維の末端である自由神経終末は歯髄象牙境の近くにあり、一部は象牙細管内にも分布しているのです。
電気や冷たさによる刺激には、歯髄の浅い部分に分布しているAδ線維とAβ線維が反応します。
温熱痛には、歯髄の深い部分に分布しているC線維が反応するのですが、C線維は伝導速度が遅く、歯髄の痛みに関与するといわれる神経線維です。
C繊維の神経終末はA繊維とは違い、歯髄の中でも特に深い所にあるため、弱い刺激では反応せず強い刺激にだけ反応します。
組織障害を起こす可能性があるような強い刺激や、内因性発痛物質に対して活発に反応するのです。
低酸素状態の場合はAδ線維とAβ線維は機能しなくなりますが、C線維は低酸素状態でも機能します。
神経が死んだ歯髄壊死のような状態になっている場合は、歯髄に血が流れることはなくなっているでしょう。
通常、赤血球中のヘモグロビンが酸素と結合して体の中に酸素を運搬しているため、血流のないところは酸素が運搬されません。
ところが、C線維は低酸素状態でも機能するため、神経が死んでいるような場合においても反応する可能性があるのです。
電気診を行う際の注意点
電気診は、鎮痛剤や精神安定剤を服用しているなどの条件下では、偽反応を示すこともあります。
歯髄の生死をより正確に診査するためには、先ほどの温度診などや切削診を併用する必要があるでしょう。
ちなみに、電気診は心臓ペースメーカーを装着している場合は検査を受けることができないため、注意しましょう。
また電気診は電流を流すため、痛みを感じたらすぐに電流が止まるようにしないといけません。
歯髄炎の症状により歯髄を取る必要がありますが、歯髄を取ると歯の感覚がなくなってしまいます。
乾燥して割れやすくなったり、虫歯になっても痛みを感じなくなったりするため、むやみに神経を取るのでなく、しっかりと診断をしてから行なわなければなりません。
まとめ
電気診とは、電気的刺激を与えることで歯髄が生きているかどうかを判断するための検査方法です。
しかし、検査を受ける際の状況によっては、本来反応しないにも関わらず反応する偽反応が出てしまうこともあるため、検査をするうえで気をつけなくてはいけません。
電気診によって反応を示す神経線維に関しては、いくつかの種類があって反応が異なるため、歯科医師が反応をしっかりと見極める必要があります。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。