歯周病は、世界一感染者数が多い感染症として、ギネス記録にも認定されています。
すべての方にとって、それだけ身近な疾患だということです。
また歯周病は、単にブラッシング不足だけでなく、食生活によっても発症や悪化のリスクが高まります。
今回は、歯周病とトランス脂肪酸の関係について解説します。
トランス脂肪酸の概要
トランス脂肪酸は、脂肪を構成する脂肪酸の一種です。
工業的につくられるものと、自然に生成されるものがあるのが特徴です。
前者は液状の油を固形化するときに、水素添加という加工を施すことで生成されます。
また後者は、牛や羊などの反芻動物の体内において、胃の中の微生物の働きによってつくられます。
トランス脂肪酸は、お世辞にも身体に良いものではありません。
WHO(世界保健機関)は、トランス脂肪酸の摂取量を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えることを推奨しています。
歯周病とトランス脂肪酸の関係
歯周病とトランス脂肪酸の関係については、主に以下のことが挙げられます。
・炎症を促進する
・メタボリックシンドロームのリスクが高まる
・免疫機能が低下する
各項目について詳しく説明します。
炎症を促進する
トランス脂肪酸を摂取することにより、体内での炎症を促進させることにつながります。
歯周病を発症している方は、歯茎に炎症が起きているケースが多いです。
こちらが進行すると、出血や歯の動揺、脱落などにつながります。
つまり、歯周病がある状態でトランス脂肪酸を摂取すると、症状が悪化して重症のリスクも高まるということです。
メタボリックシンドロームのリスクが高まる
トランス脂肪酸を過剰摂取することにより、メタボリックシンドロームのリスクも高まります。
メタボリックシンドロームは、腹囲が大きいことに加え、血圧の上昇や空腹時の高血糖、脂質の異常値のうち2つ以上が当てはまる状態です。
またメタボリックシンドロームは、歯周病の悪化因子の一つとして知られています。
そのため、トランス脂肪酸によって発症リスクが高まることにより、間接的に歯周病も発症しやすくなります。
免疫機能が低下する
免疫機能が低下するという点も、トランス脂肪酸が歯周病につながる原因の一つです。
冒頭で触れたように、歯周病は歯周病菌という細菌に感染することで起こる感染症の一種です。
また身体の免疫機能が低下している場合、歯周病菌などの細菌に感染しやすくなり、歯周病のリスクは増大します。
トランス脂肪酸が多く含まれるもの
トランス脂肪酸が多く含まれる食品としては、主に以下の物が挙げられます。
・加工油脂(マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド)
・加工油脂を原材料とする食品(パン、ケーキ、ドーナツなど)
・揚げ物
・牛肉
・乳製品 など
日頃マーガリンを使用している方は多いかと思いますが、こちらは加工油脂の一種であり、工業的につくられたトランス脂肪酸を多く含んでいます。
またショートニングやファットスプレッドも同様です。
ショートニングは、無味無臭の白い固形油脂で、パンやお菓子をサクサクもしくはフワフワに仕上げるときに使用されます。
ファットスプレッドは油脂を主成分とする食品で、マーガリンよりも水分が多く、やわらかいのが特徴です。
もちろん、これらの加工油脂を使用したパンやケーキ、ドーナツなどの食品についても、トランス脂肪酸の含有量は多いです。
クッキーやスナック菓子、冷凍食品にも、加工油脂は含まれています。
さらに、揚げ物に使用する油を高温で繰り返し使用していると、トランス脂肪酸が増加する可能性があります。
ちなみに反芻動物である牛の体内でもトランス脂肪酸は生成されるため、牛肉はもちろん牛乳やバター、チーズなどの乳製品にも含まれています。
トランス脂肪酸におけるその他のデメリット
トランス脂肪酸は、歯周病の発症や悪化のリスクを高めるものです。
またそれだけでなく、さまざまな健康被害を引き起こす可能性もあります。
例えばトランス脂肪酸がLDLコレステロールを増やし、HDLコレステロールを減らすことにより、動脈硬化や心筋梗塞といった心臓疾患のリスクが高まります。
さらに、トランス脂肪酸は体脂肪の蓄積を促進する可能性があります。
特にパンやケーキ、ドーナツなどは高カロリーであるため、体脂肪の増加と蓄積を同時に促進するおそれがあります。
ちなみに、トランス脂肪酸は喘息やアレルギー性鼻炎など、アレルギー性疾患との関連も指摘されています。
糖尿病やがん、胆石や脳卒中、認知症などとの関連も研究されていますが、こちらについてはまだ明確な結論は出ていません。
まとめ
普段何気なく食べている食品の中には、多くのトランス脂肪酸が含まれている可能性があります。
そのため、歯周病の自覚症状がある方は、なるべく摂取しないことをおすすめします。
またトランス脂肪酸は、歯周病だけでなくさまざまな全身疾患との関連性も深いです。
特に心臓疾患との関連性はピックアップされることも多いため、豆乳バターやアーモンドバターなど、トランス脂肪酸が含まれない代替食品を選ぶことも検討しましょう。