夏野菜は、夏に旬を迎える野菜であり、緑黄色野菜など栄養が豊富なものも多いです。
そのため、虫歯予防を意識した食生活においては積極的に摂取すべきだと言えますが、摂取する際にはいくつか注意すべき点もあります。
今回は、夏野菜における虫歯予防の注意点について解説します。
夏野菜における虫歯予防の注意点4選
虫歯予防の一環として夏野菜を摂取する場合、以下の点には注意が必要です。
・酸によるエナメル質への影響
・糖質の高い野菜の停滞性
・唾液量の減少とダラダラ食い
・調理法や味付け
各項目について詳しく説明します。
酸によるエナメル質への影響
トマトはビタミンCやリコピンが豊富で、歯茎の健康維持や夏バテ予防に最適な優れた夏野菜です。
しかし虫歯予防の観点からは、トマトが強い酸性を持つ食材であることに注意しなければなりません。
私たちの口の中は普段、唾液の働きによって中性に保たれていますが、食事をすると一時的に酸性に傾きます。
口の中のpH(水素イオン指数)が5.5以下に傾くと、歯の表面を覆って保護している一番硬い組織であるエナメル質が溶け始める脱灰という現象が起こります。
ミニトマトをスナック感覚でつまんだり、酸味の強いポン酢やドレッシングを大量にかけたりすると、口の中が長時間酸性にさらされ、虫歯になりやすい環境を作ってしまいます。これを防ぐためには、トマトを食べた後にすぐ水で口をゆすぐか、緑茶や麦茶を飲んでお口の中の酸を速やかに洗い流し、中性に戻す習慣をつけることが非常に大切です。
また酸の影響を受けた直後のエナメル質は一時的にわずかにやわらかくなっているため、食後すぐに強い力で歯磨きをすると歯を傷つける恐れがあります。
食後はまずお水でしっかりと口をゆすぎ、少し時間を置いてから優しく丁寧にブラッシングを行うのが、歯を酸から守る理想的なセルフケアです。
糖質の高い野菜の停滞性
とうもろこしやカボチャ、サツマイモなどの夏野菜は、自然な甘みがあって大人から子どもまで非常に人気がありますが、その甘みの通り糖質が多く含まれています。
虫歯の原因菌であるミュータンス菌は、口の中にある糖分を餌にして増殖し、歯を溶かす強力な酸を作り出します。
そのため、糖質の高い夏野菜を食べることは、それだけで虫歯のリスク因子を高めることにつながります。
特にとうもろこしは、特有の硬い繊維が歯と歯の間や、奥歯の複雑で深い溝に非常に挟まりやすいという厄介な性質を持っています。
このように食べカスが口の中に長く留まる性質を停滞性と呼び、虫歯リスクを劇的に跳ね上げる原因になります。
歯に挟まった繊維や糖分がそのまま放置されると、その狭い場所で虫歯菌が爆発的に繁殖し続け、歯の隙間から進行するタチの悪い局所的な虫歯を引き起こします。
したがって、とうもろこしなどの停滞性が高い野菜を食べた後は、通常の歯ブラシだけで汚れを落とすことは不可能です。
フロスや歯間ブラシを必ず使用し、歯の隙間に詰まった繊維や目に見えない糖分の残りカスをしっかりとかき出すことが、健康な歯を守るために不可欠な習慣です。
唾液量の減少とダラダラ食い
夏の厳しい暑さによって体力が奪われると、食欲が落ちて1回の食事を満足に摂れなくなることがあります。
その結果、手軽に食べられるミニトマトやきゅうり、おやつなどをだらだらと時間を決めずに少しずつ間食代わりに口にしてしまうケースが増加します。
しかし、このように頻繁に食べ物を口に入れる行為は、口の中が酸性から中性へと回復する時間を完全に奪ってしまい、常に歯が溶け続けている危険な状態を作ります。
さらに夏場は、大量の汗をかくことによる水分不足や、夏バテによる自律神経の乱れが原因で、口の中を自然に洗浄して中和してくれる貴重な唾液の分泌量が著しく減少します。
唾液には、抗菌作用や酸を薄める緩衝作用、溶けた歯を修復する再石灰化作用がありますが、口が乾燥するとこれらの防御機能がすべてストップしてしまいます。
この最悪な状況を打破するためには、夏野菜を食べる際にも食事や間食の時間をしっかりと決め、だらだら食べを完全に排除するメリハリが絶対に必要です。
また喉の渇きを感じる前にこまめに水や麦茶で水分補給を行い、常に口の中を潤して唾液の分泌を促すとともに、乾燥による細菌の増殖を徹底的に防ぐ意識を持ちましょう。
調理法や味付け
夏野菜そのものはビタミンや食物繊維が豊富で非常にヘルシーな食材ですが、実はその調理法や味付けの段階において、目に見えない大きな虫歯リスクが潜んでいます。
例えばナスやカボチャの煮浸し、トマトケチャップやソースをふんだんに使った洋風の料理などには、料理のコクや旨味を引き出すために多くの砂糖やみりんが投入されています。
本人は健康のために野菜を積極的に摂取しているつもりでも、口の中ではこれが虫歯菌にとって絶好の栄養源となってしまいます。
特に水分が抜けて味が染み込んだ煮物などは、歯にくっつきやすく糖分が口腔内に長く残るため注意が必要です。
この盲点を克服するための対策として、家庭で調理をする際には、砂糖の代わりに虫歯菌の餌にならない甘味料を賢く活用しましょう。
また砂糖に頼るのではなく、出汁の旨味を利かせたり、適量のレモンをアクセントにしたりして薄味でも満足できる工夫を凝らし、糖質を可能な限りカットする選択が推奨されます。
まとめ
夏野菜は栄養が豊富であり、美味しく食べられるものも多いですが、決してメリットばかりというわけではありません。
特に虫歯予防を徹底したい方にとっては、摂取する夏野菜の種類や味付けなどを考慮しなければ、かえって虫歯リスクが高まる可能性もあります。
もちろん甘いケーキやチョコレートなどに比べると虫歯リスクは少ないですが、今一度摂取の仕方については見直すべきです。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。