虫歯予防では、ブラッシングや定期検診など、日々の生活に何かをプラスする考えが一般的です。
しかし、日々の習慣の中では、虫歯のリスクを高めてしまう行動を排除する引き算の考えも必要になってきます。
今回は、虫歯予防対策として逆効果になる朝の習慣について解説します。
虫歯予防対策として逆効果になる朝の習慣4選
以下の習慣は、虫歯を予防するにあたって逆効果になります。
・起きてすぐのうがいなしでの朝食
・朝食後すぐのブラッシング
・健康意識による酸性飲料のダラダラ飲み
・ブラッシング後の徹底的なブクブクうがい
各項目について詳しく説明します。
起きてすぐのうがいなしでの朝食
朝起きてすぐに水分補給をしたり、そのまま朝食を食べたりしている方もいるかと思います。
実は、睡眠中の口内は唾液の分泌が極端に減るため、細菌が1日の中で最も爆発的に繁殖した状態になっています。
その数は、なんと糞便1g中の細菌数に匹敵すると言われるほどです。
この状態で何もせずに食事や水分を摂ると、口の中で増殖した大量の虫歯菌や歯周病菌、そしてそれらが作り出したプラークのもとを、食べ物と一緒に歯の表面にすり合わせたり、そのまま体内に丸ごと飲み込んだりすることになってしまいます。
さらに、虫歯菌が口内に大量に残った状態で、朝食に含まれる糖質が口に入ると、菌は待っていましたと言わんばかりに糖を取り込み、即座に強力な酸を作り出します。
これにより、歯の表面からカルシウムやリンが溶け出す脱灰が急激に進み、虫歯のリスクが跳ね上がってしまいます。
これを防ぐためのもっとも効果的で簡単な対策は、起床直後、まず水でブクブクとうがいをする、または朝食の前に歯を磨いてしまうことです。
朝一番に口内の細菌数を物理的に減らしておくことで、朝食時の酸の発生を最小限に抑えることができます。
朝食後すぐのブラッシング
「食べた後は、虫歯にならないようにすぐ歯を磨くべき」という教えは、朝食のメニューによっては100%正解とは言えず、むしろ逆効果になるケースがあります。
私たちの歯の表面は、人体でもっとも硬いエナメル質という組織で守られていますが、食事を摂ると口内環境は一気に酸性に傾きます。
このとき、エナメル質は一時的にカルシウムなどが抜け落ち、非常にやわらかく傷つきやすい脱灰状態になっています。
特に朝食で、ミカンやグレープフルーツなどの柑橘類、ヨーグルト、スムージー、100%果汁ジュースといった酸性の強いものを食べた直後は、歯の表面がガラスのようにデリケートです。
このタイミングで歯ブラシを使ってゴシゴシと力任せに磨いてしまうと、やわらかくなったエナメル質を自らの手で削り取ってしまい、酸蝕症を引き起こします。
これが結果として、歯を薄くし、虫歯になりやすい脆い状態を作ってしまうのです。
通常、食後は唾液の働きによって、約20〜30分かけて口内が中性に戻り、歯が再び硬くなる再石灰化が行われます。
そのため、朝食後のブラッシングは、食後30分ほど時間を空けてから行うのがベストです。
もし通勤や通学の都合で時間がない場合は、食直後に水でしっかり口をゆすいで酸を流してから、優しい力で磨くように意識してください。
健康意識による酸性飲料のダラダラ飲み
朝の健康維持や美容のために、レモン水や特製スムージー、お酢ドリンク、ビタミンC入りの炭酸水などを飲む習慣を持つ方が増えています。
これらは体に素晴らしいメリットをもたらしますが、歯の健康という観点から見ると、実は強力な酸による攻撃にほかなりません。
一般的に、口内のpHが5.5以下になると歯のエナメル質が溶け始めるとされていますが、健康に良いとされる酢や柑橘類の多くは、この数値を大きく下回る強い酸性値を示します。
さらに虫歯リスクを最悪にしてしまうのが、これらをデスクワークや朝の支度、スマートフォンの操作をしながらダラダラと時間をかけて少しずつ飲むという行為です。
通常、一時的に酸性に傾いた口内は、唾液の緩衝作用によって中性へと戻っていきます。
しかし、断続的に酸性の飲み物を口に含んでいると、口内がいつまでも酸性のままキープされてしまいます。
これでは、歯が常に溶け続けているのと同じ状態になり、虫歯菌にとってこれ以上ない絶好の繁殖環境を与えてしまいます。
健康飲料を摂る際は、ストローを使って歯に触れないように飲む、時間をかけずに短時間で飲み干すといった工夫を取り入れ、口内を酸性のまま放置しない対策を徹底しましょう。
ブラッシング後の徹底的なブクブクうがい
朝のブラッシングを終えた後、口の中をスッキリとさせたいがために、コップいっぱいの水で何度も激しくうがいをしている方は多いでしょう。
実は、ブクブクと気が済むまでゆすぐ行為は、歯磨き粉に含まれる重要な予防成分のフッ素をすべて洗い流してしまうため、非常にもったいない逆効果な習慣です。
現代の市販されている歯磨き粉の多くには、歯の再石灰化を強力に促進し、酸に負けない強い歯質を作るためのフッ素が配合されています。
ブラッシングの目的は、汚れを落とすことだけでなく、このフッ素を口内に残して歯をコーティングすることにもあります。
しかし、何度もゆすいでしまうとフッ素の濃度が極限まで薄まり、歯に定着できなくなります。
現在、世界的な歯科医療機関や学会で強く推奨されている正しい基準は、歯磨き後のうがいは、ほんの少しの水(大さじ1杯・約15ml程度)で、1回だけ軽く5秒ほどゆすぐという方法です。
最初は口の中に歯磨き粉の泡や味が残り、少し違和感や気持ち悪さを覚えるかもしれませんが、これこそがフッ素が歯に留まっている証拠です。
またうがいをした後の1〜2時間は、フッ素の浸透効果を最大限に高めるため、飲食を控えるのが理想的です。
まとめ
虫歯になりやすい傾向にある方は、ブラッシングの仕方などとあわせて、虫歯のリスクを高めるような習慣がないかを見直してみましょう。
中には、健康のために行っている習慣が、虫歯菌にとって好条件をつくり出しているケースもあります。
またセルフケアだけで満足せず、歯科クリニックでのプロフェッショナルケアも絶対に行わなければいけません。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。