虫歯があるにもかかわらず、治療を受けずにそのままにしているという方は残念ながら多いです。
このような方は、虫歯の痛みや炎症以外にもさまざまな症状に悩まされるため、もっと危機感を持つべきです。
また虫歯と関係のある疾患の一つにがんが挙げられます。
今回は、虫歯とがんの関係性を中心に解説します。
がんの概要
がんという病名を耳にする機会は多いですが、実際どのような疾患なのか理解していないという方も多いかと思います。
がんは簡単にいうと、遺伝子の突然変異によって生まれる死なない細胞です。
人間の身体は無数の細胞によって構成されていて、生命維持のために細胞分裂を繰り返しています。
このとき、遺伝子のコピーミスにより、細胞分裂を繰り返し続ける死なない細胞が突然発生します。
こちらががん細胞であり、蓄積されるとやがてがんになります。
またがんはその後周囲に広がり、やがて血管やリンパ管に入り込んで他の器官にまで範囲を広げる転移を起こします。
最終的には、発症した方を死に至らしめることもあるおそろしい病気です。
虫歯菌とがんの関係性とは?
虫歯を引き起こすのは、ミュータンス菌などの細菌です。
こちらは口内の糖を分解し、酸を生成することにより、歯のエナメル質を溶かして虫歯を引き起こします。
しかし最近の研究では、これらの細菌が口内だけにとどまらず、唾液や血液を通じて体内に入り込み、臓器に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。
例えば口内の細菌は食道がん、胃がんなどのリスクを高めるとされています。
また虫歯を放置している方の多くは、歯周病も発症しています。
歯周病は虫歯とは別の細菌への感染で発症しますが、歯周病の原因菌であるポルフィロモナス・ジンジバリスは肺がんやすい臓がんのリスクを高めるという報告があります。
つまり虫歯を放置している方ほど、がんを発症しやすくなるということです。
物理的な刺激ががんを引き起こすことも
歯がボロボロになるほど虫歯を放置してしまった方の中には、天然歯の多くが原形をとどめていないという方もいるでしょう。
通常虫歯になった歯は、歯の中心付近に穴が開いて色も黒くなっていますが、中程度の進行具合であれば歯の原型はまだ保っています。
しかし重度もしくは末期まで進むと、歯の形状が歪になり、一部が尖ってしまうことも考えられます。
このような歯は、咀嚼や発音などのときに舌や頬の内側に引っかかることがあります。
引っかかる状態が続くと、痛みが生じることはもちろん、舌がんや口腔がんを発症するリスクが高まります。
ちなみに尖った歯の刺激によってがんを発症しなかったとしても、同じ箇所にばかり刺激が加わると、カタル性口内炎という外傷性の口内炎を発症しやすくなります。
虫歯とがんの共通点について
虫歯とがんはまったく異なる疾患ですが、実はいくつかの共通点があります。
まず、発症し始めの頃はいずれも自覚症状がほとんどありません。
虫歯はある程度進行し、歯に穴が開いて初めて自覚するケースが多く、がんも初期段階で発見するのは難しいです。
またもう1つの共通点は、自覚できる状態になった頃には、かなり病状が悪化しているということです。
虫歯は症状が軽ければ軽いほど、治療も簡単になるため、患者さんの身体の負担は軽減されます。
しかし重度にまで進行している場合、治療が難しく、抜歯をしなければいけないこともあります。
ちなみにがんについても虫歯と同じようにステージがあり、末期の場合は治療を行っても転移が進み、手遅れになる可能性が高いです。
がん治療を受ける際は事前に虫歯治療を受ける必要がある
がんを発症した方は、長くつらい治療を行うことになります。
またがん治療を受ける際は前もって虫歯を治療したり、歯石を除去したりして、口内環境を整えておかなければいけません。
こうすることで、がん治療による副作用が軽減される可能性が高くなります。
現に口腔ケアを行わないで抗がん剤治療を行った場合と、ケアをしてから治療を行った場合とでは、歯茎の出血の仕方がまったく違うという患者さんもいるくらいです。
一度がんと診断されてしまった場合、がんそのもののことで頭がいっぱいになり、口腔ケアまでは頭が回らない方も多いでしょう。
しかし、現状ではがんを診るすべての医師が、口腔ケアについてアドバイスをしてくれるとは限りません。
そんため、患者さん自身が口腔ケアの知識を持ち、自発的に行うことが求められます。
ちなみに、がんと診断されてから治療を開始するまでには、平均3週間程度の時間を要します。
その間に、できる限り虫歯の治療などの口腔ケアをしておくべきです。
まとめ
虫歯治療を受けるのには勇気がいります。
特に過去の治療でトラウマを抱えてしまった方などは、歯科クリニックを見るのも嫌なくらいでしょう。
気持ちはわかりますが、治療を受けなければ虫歯は完治しません。
またがんなどの命を脅かす病気につながることもあるため、たとえ苦手であったとしても、まずは歯科医師に相談するところから始めましょう。