歯石は、長時間口内に残ったプラークが石化したものです。
奥歯のさらに奥の方や、前歯の裏側など、磨き残しが出やすい部分に付着するケースが多いです。
またこちらは歯科クリニックに通院しなければ基本的に除去できませんが、放置するとどうなってしまうのでしょうか?
今回はこちらの点について解説します。
歯石を除去しないことによるデメリット4選
歯石を除去しないことのデメリットとしては、主に以下のことが挙げられます。
・歯周病が進行して歯を失う
・強い口臭の原因になる
・虫歯が発生、悪化しやすくなる
・全身の重大な疾患を引き起こす
各デメリットについて詳しく説明します。
歯周病が進行して歯を失う
歯石の表面は顕微鏡で見ると非常に粗く、ザラザラした構造をしています。
このザラザラした部分には、細菌の塊であるプラークが強力に吸着しやすくなります。
歯石そのものは死んだ細菌の化石のようなものですが、その周囲や内部には無数の生きた歯周病菌が住み着き、毒素を出し続けます。
この毒素が歯茎に持続的な刺激を与えることで、歯茎が赤く腫れたり、ブラッシング時に出血したりする歯肉炎が引き起こされたりします。
この段階で歯石を取り除かずに放置すると、炎症はさらに深い組織へと進行し、歯を支える土台である顎の骨を徐々に溶かしていく歯周炎へと悪化します。
歯周炎のおそろしい点は、初期から中期にかけて痛みがほとんどない“沈黙の病”であることです。
自覚症状がないまま骨の破壊が進み、歯石はさらに歯茎の奥深くへと侵入して炎症の範囲を広げます。
最終的には歯を支える骨がほとんど溶けてしまい、健康で虫歯のない歯であってもグラグラと大きく揺れ始め、硬いものを噛めなくなります。
最悪の場合、自然と抜け落ちてしまったり、歯科クリニックで抜歯をせざるを得なくなったりします。
強い口臭の原因になる
口臭の主な原因は、口の中にいる細菌が食べカスなどのタンパク質を分解するときに発生させる揮発性硫黄化合物と呼ばれるガスです。
このガスには、卵が腐ったような臭いや、腐った玉ねぎのような不快な臭いが含まれています。
歯石が口内にあると、そのザラザラした表面が細菌の格好の温床となり、ガスを生み出す悪玉菌が爆発的に増殖してしまいます。
さらに歯石の放置によって歯周病が進行すると、歯と歯茎の隙間である歯周ポケットがどんどん深くなっていきます。
このポケットの奥深くは酸素が届かない環境であるため、酸素を嫌う嫌気性細菌という非常にタチの悪い細菌が好んで住み着きます。
この嫌気性細菌は、一般的な口臭よりもはるかに強力で不快な悪臭ガスを大量に放出する特徴を持っています。
また炎症が慢性化すると、歯周ポケットの内部から常に血や膿がじわじわと分泌されるようになります。
この血液や膿に含まれるタンパク質を細菌がさらに分解することで、生ゴミのような独特で強烈な口臭へと変化していきます。
虫歯が発生、悪化しやすくなる
歯石そのものはカルシウムなどが固まった無機物であるため、歯石が直接酸を出して歯を溶かすわけではありません。
しかし、歯石がある環境は虫歯のリスクを極めて高くします。
その理由は、歯石の構造上、毎日のブラッシングではどれだけ頑張ってもプラークを完全に落としきれなくなるからです。
プラークの中に潜む虫歯菌は、私たちが食事から摂取した糖分を取り込んで酸を作り出し、この酸が歯の表面のミネラルを溶かす脱灰を引き起こして虫歯を作ります。
また歯石が歯の表面や歯と歯の隙間を分厚く覆ってしまうと、その下で静かに進行している初期の虫歯を目視や触診で発見することが非常に困難になります。
本来であれば早期発見・早期治療ができるはずの小さな虫歯が、歯石という目隠しのせいで見過ごされ、気づいたときには重症化しているケースも少なくありません。
さらに、自宅での歯磨きで使うフッ素配合の歯磨き粉や、唾液に含まれる歯の修復成分も、分厚い歯石に阻まれて歯の表面まで届かなくなってしまいます。
結果として、歯科クリニックで久しぶりに歯石をキレイに除去したところ、その下から広範ボロボロになった虫歯が何箇所も見つかるという最悪のシナリオを招く原因になります。
全身の重大な疾患を引き起こす
口内のトラブルは、血液や気管を通じて全身の健康を脅かすことが近年の医学研究で明らかになっています。
歯石に住み着いた無数の歯周病菌は、歯茎の毛細血管から容易に体内の血液循環へと侵入します。
血管内に入り込んだ細菌やその毒素は、血管の壁に慢性的な炎症を引き起こし、血管を硬く狭くする動脈硬化を急速に促進させます。
その結果、心臓の血管が詰まる心筋梗塞や、脳の血管が詰まる脳梗塞といった、命に直結する深刻な心血管疾患の発症リスクを跳ね上げます。
また歯周病菌の毒素は血液中を巡る中で、血糖値を下げる唯一のホルモンであるインスリンの働きを邪魔する物質を放出させます。
これにより、糖尿病のコントロールが著しく悪化することが分かっています。
逆に歯科クリニックで歯石を落として歯周病を治療すると、糖尿病の数値が改善することも証明されていて、医科からも重視されています。
さらに高齢者の場合、歯石によって不潔になった唾液や食べカスが、誤って肺へとつながる気管に入り込むことで誤嚥性肺炎を引き起こす大きな原因になります。
これは日本人の死因の上位を占めるおそろしい病気です。
このように、たかが歯の汚れと歯石を放置することは、血管、血糖、そして呼吸器の健康を損ない、全身の健康寿命を著しく縮めるリスクを背負うことと同義です。
まとめ
歯石が付着している状態について、そこまで大事と捉えていない方は少なくありません。
しかし、実際歯石は口内において非常に厄介なものであり、場合によっては全身の健康を損なうことにもつながります。
そのため、定期的に歯科クリニックに通い、虫歯や歯周病の有無を確認してもらうだけでなく、歯石を除去するスケーリングも受けなければいけません。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。