普段お酒をたしなむ方の中には、ビールを好んで飲むという方も多いかと思います。
またこのような方は、ビールにおける口内環境への影響について、ある程度把握しておくことが求められます。
今回は、歯周病とビールにはどのような関係があるのかについて、詳しく解説します。
アルコールによる口腔内の乾燥と細菌の繁殖
ビールに含まれるアルコールには、強い利尿作用があります。
ビールを飲むと水分を補給しているように感じられますが、実際には摂取した水分以上の量が尿として体外に排出されてしまいます。
この脱水作用によって体内の水分が減少すると、唾液の分泌量が著しく低下します。
唾液には、口の中の食べカスを洗い流す自浄作用や、細菌の活動を抑える抗菌作用、酸性に傾いた口腔内を中性に中和する緩衝作用などの役割が備わっています。
しかしビールを飲んで唾液が枯渇し、口の中が乾燥した状態が続くと、これらの防御機能がまったく働かなくなります。
その結果、歯周病の原因菌であるジンジバリス菌などが爆発的に繁殖しやすい環境が整ってしまいます。
特にビールを飲んだまま水分補給をせずに眠ってしまうと、夜間の唾液分泌低下も重なり、最悪の衛生環境となってしまいます。
ビールを飲む際は、同量以上の水を意識的に摂取し、口の中の潤いを保つことが歯周病予防において極めて重要です。
ビールに含まれる糖質とプラークの形成
ビールは他のお酒、例えばウイスキーや焼酎などの蒸留酒と比べると、製造過程で麦芽由来の糖質がどうしても多く残る醸造酒に分類されます。
このビールに含まれる糖質は、口の中に潜む歯周病菌や虫歯菌にとって格好の栄養源になります。
細菌がこの糖質を取り込んで代謝する過程で、粘着性の高い物質を作り出し、それが歯の表面に付着してプラークへと成長します。
プラークはまさに細菌の塊であり、これが歯と歯茎の隙間である歯周ポケットに溜まることで、歯茎に炎症を引き起こす直接的な原因になります。
またビールを飲む際には、唐揚げやポテトチップス、味の濃いおつまみなどを一緒に食べることが多くなりがちです。
これらのおつまみに含まれる糖質や炭水化物もまた、ビールの糖質と合わさることでプラークの形成を強力に後押ししてしまいます。
長時間にわたってビールを飲み進めるだらだら飲みは、口の中が常に細菌の栄養で満たされた状態を維持することになるため、歯周病のリスクを高める悪習慣と言えます。
免疫力の低下と歯周組織の炎症悪化
過度なビールの摂取は、体全体の免疫システムを著しく弱める原因になります。
アルコールが体内で分解される際、肝臓をはじめとする多くの器官に負担がかかるだけでなく、白血球などの免疫細胞の機能が一時的に低下することが分かっています。
歯周病は、歯周病菌という外敵と、それに抵抗しようとする体の免疫力とのバランスによって進行度が変わる慢性疾患です。
そのため、ビールの飲みすぎによって体の免疫力が低下すると、歯周病菌の侵入や増殖を食い止めることができなくなります。
さらに、アルコールには血管を拡張させ、血流を激しくする作用があります。
すでに歯茎に軽い炎症がある方がビールを飲むと、血管拡張によって歯茎の腫れや痛みが強くなったり、ブラッシングの際に血が止まりにくくなったりすることがあります。
慢性的な多量飲酒は、歯周組織の破壊を急速に進めるリスクがあり、結果として歯を支える骨が溶け、歯が抜け落ちるリスクを平時よりも大幅に高めてしまうことにつながります。
飲酒後のケア不足と生活習慣の乱れ
ビールを飲んだ後の行動パターンも、歯周病を悪化させる大きな要因の一つです。
ビールなどのアルコールを摂取すると、脳の麻痺や心地良い疲労感、強い眠気に襲われることがよくあります。
その結果、「今夜は面倒だから明日磨けばいいや」と、歯磨きをせずにそのまま寝落ちしてしまうケースが後を絶ちません。
飲酒後は唾液が減少し、糖質が口に残っています。
歯磨きを怠って睡眠をとることは、歯周病菌に対して「どうぞ増殖してください」と言っているようなものです。
また日常的にビールを大量に飲む生活習慣がある方は、睡眠の質が低下しやすく、慢性的な睡眠不足や疲労蓄積に陥りやすい傾向があります。
このような不摂生なライフスタイル全体が、体の抵抗力を下げ、歯周病をじわじわと進行させる背景になります。
ビールを楽しく健康的に楽しむためには、飲む前に歯を磨くスペースを確保しておく、「酔う前に一度口をゆすぐといった対策が必要です。
そして何より、どれだけ酔っていても、寝る前のブラッシングだけは絶対に徹底するという強い自己管理の意識が不可欠です。
まとめ
冒頭でも触れた通り、毎日のように晩酌する方の中には、ビールを好んで飲む方が多いです。
そのため、ビールと虫歯や歯周病の関係性について、詳しく把握しておく必要があります。
もちろん、リスクがあるのはビールだけではありません。
お酒全体が虫歯リスクを高めるものと理解し、適切な摂取方法を模索していくことが大切です。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。