虫歯治療では、歯を削るエアタービンや、口内の水分を吸い取るバキュームなどあらゆる器具が使用されます。
どれも安全かつスピーディーな治療には欠かせないものですが、その他の器具としては“コントラアングル”というものが挙げられます。
今回は、こちらの詳細について解説します。
コントラアングルとは?
コントラアングル(コントラアングルハンドピース)は、歯科医師が虫歯治療などで患者さんの口内を治療する際に使用する器具です。
具体的には、先端に緩やかな角度がついた切削器具の持ち手を指しています。
歯科用ハンドピースには、主に真っ直ぐな形状のストレートハンドピースと、先端に角度がついたコントラアングルハンドピースの2種類が存在します。
人間の口の構造上、奥歯などの狭いスペースを真っ直ぐな器具で治療しようとすると、頬の粘膜や他の歯が邪魔になり、器具の先端を適切な位置に当てることが困難になります。
そこで、持ち手に対してヘッドが絶妙な角度で屈曲しているコントラアングルが開発されました。
この独自の角度があることで、狭い口の中でも死角を減らし、治療部位に対してドリルを正確に垂直・適切な角度で当てることが可能になります。
コントラアングル自体は回転を発生させるモーターではなく、内部のギアを介して先端のバーに回転動力を伝える役割を持っています。
診療ユニットから伸びるマイクロモーターや、エアーモーターの先端にカチッと接続して使用されるのが一般的です。
また本体の素材には、軽量で耐久性が高く、高圧蒸気滅菌に耐えられるチタンやステンレスなどが使用されています。
近年のモデルでは、暗い口内を明るく照らすためのLEDライトや、摩擦熱を防ぐための注水回路が標準装備されているものが主流となっています。
コントラアングルの主な用途と役割
コントラアングルの主な役割は、虫歯の正確な除去、歯の形を整えるプレパレーション、そして治療後の微調整や仕上げ研磨など多岐にわたります。
虫歯治療においてもっとも頻繁に使用されるのは、虫歯を削り取る場面です。
虫歯治療では通常、最初にエアタービンと呼ばれる超高速回転する別の器具を使い、硬いエナメル質を素早く削ります。
しかしタービンは回転数が高すぎるため、削る際の振動や微調整が難しく、虫歯が神経に近づいた深い部分を削るのには向きません。
削りすぎて神経を傷つけるリスクがあるからです。
そこで登場するのが、コントラアングルです。
コントラアングルはタービンよりも低速で、かつ強い回転力を発揮できるため、健康な歯を削りすぎることなく、やわらかくなった虫歯だけを慎重に狙い通りに除去できます。
虫歯を除去した後は、詰め物や被せ物がぴったりと適合するように、歯の形をキレイに整える支台歯形成を行います。
この際にもコントラアングルが活躍し、微細な角度調整を行いながらなめらかな面を作り出します。
さらに、詰め物を接着した後に噛み合わせの高さが高い部分を少しずつ削って調整する咬合調整や、歯の表面をツルツルにするポリッシングの工程でも必須の器具です。
このように、初期の荒削り以降の精密さが求められるすべての工程を支える大黒柱と言えます。
5倍速コントラと等速・減速コントラの違い
コントラアングルには内部のギア比によっていくつかの種類があり、一般的に5倍速コントラ、等速コントラ、減速コントラの3つに大別されます。
これらは器具の持ち手に巻かれているカラーリングによって、歯科医師や歯科衛生士がひと目で判別できるようになっています。
まず5倍速コントラは、モーターの回転数を内部ギアで5倍に増速させて回転させる器具です。
近年の日本の虫歯治療では、前述した超高速のエアタービンの代わりに、この5倍速コントラを使用するクリニックが急増しています。
タービン特有のキーンという高い不快な金属音がしないため、歯医者が苦手な患者さん、特に子どもの恐怖心を和らげる効果があります。
また、ブレが少なく軸が安定しているため、非常に精密に歯を削ることができます。
次に等速コントは、モーターの回転数と同じ速度で先端が回転する器具です。
主に虫歯を慎重に削る際や、プラスチック(コンポジットレジン)を詰めた後の大まかな形整に使用されます。
減速コントラは、回転数を1/4や1/10などに落として回転させる器具です。
回転速度は遅くなりますが、その分非常に強いパワーを発揮します。
主に、根管治療でニッケルチタンファイルという細い器具を回すときや、インプラント手術で骨に穴を開けるときに用いられます。
その他、歯に付着した頑固な歯石や着色汚れを落とすクリーニング(PMTC)で採用されることも多いです。
まとめ
虫歯治療が苦手な患者さんは、虫歯治療において「これから何をされるかわからない」という恐怖を抱きがちです。
そのため、今回解説したコントラアングルを始め、少しでも器具に関する知識を持っておくことをおすすめします。
いくら歯科医師でも、これから使用する器具について、すべて事細かにディテールを説明することはできません。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。