虫歯予防は、名前の通り虫歯を予防するためのものであり、歯の痛みや歯茎の腫れといったトラブルを防止できます。
また将来的に歯を失うリスクも軽減できますが、虫歯予防を行うことで、デメリットが生じるケースはあるのでしょうか?
今回はこちらの点について解説します。
虫歯予防を行うことによるデメリット4選
虫歯予防は、方法を間違えると以下のようなデメリットが生じることがあります。
・歯の変色と全身への健康リスク
・歯や歯茎の損傷
・口内常在菌のバランス崩壊
・消化器系への影響
各デメリットについて詳しく説明します。
歯の変色と全身への健康リスク
虫歯予防の主流であるフッ素は、適切に使用すれば歯質を強化し再石灰化を促進する高い効果があります。
しかし長期間にわたり過剰に摂取すると、特に永久歯の形成期にある子どもにおいて歯牙フッ素症を引き起こすリスクがあります。
これは歯の表面に白い斑点や縞模様、重症化すると茶褐色の変色や小さなくぼみが生じる審美的な障害です。
また高濃度のフッ素を一度に誤飲した場合には、急性中毒として吐き気、嘔吐、腹痛などの消化器症状が現れることもあります。
さらに、水道水へのフッ化物添加が行われている地域や、フッ素サプリメントを併用している環境では、日常的な総摂取量の管理が難しくなります。
その結果、骨軟化症などの全身的な健康影響を懸念する声も一部で存在します。
フッ素配合の歯磨き粉や洗口液を使用する際は、年齢に応じた適切な使用量と濃度を厳守し、特に幼児がペーストを飲み込まないよう保護者が監視するなどの配慮が必要です。
このように予防の要であるフッ素も、摂取量や使用方法を誤れば、歯の美しさを損なうだけでなく、身体への毒性をもたらすという明確なデメリットが存在します。
歯や歯茎の損傷
虫歯を予防しようとする強い意識から、1日に何度も過度にブラッシングをしたり、強い力で歯を磨きすぎたりするオーバーブラッシングは、口腔環境を悪化させる原因になります。
硬すぎる歯ブラシの使用や、研磨剤が大量に含まれる歯磨き粉を用いた強い摩擦は、歯の最外層にある高硬度のエナメル質を徐々に摩耗させ、内側の象牙質を露出させます。
象牙質が露出すると、冷たいものや熱いものが神経に障る知覚過敏症を発症し、激しい痛みを伴うようになります。
さらに、強いブラッシング圧は歯を支える歯茎を退縮させ、歯の根元を露出させます。
セメント質はエナメル質よりも酸に弱くやわらかいため、根元が露出すると根面う蝕のリスクが逆に急増します。
予防のための熱心なブラッシングが、結果として歯の寿命を縮める物理的な破壊につながる恐れがあるため、適切なブラッシング圧と正しい毛先の当て方の習得が必要です。
良かれと思って行う毎日の習慣が、削れた歯を元に戻せないという不可逆的なダメージを生むリスクを孕んでいます。
口内常在菌のバランス崩壊
虫歯菌の増殖を抑えるために、強力な殺菌作用を持つマウスウォッシュや洗口液を過度に常用すると、口腔内の微細生物叢のバランスを崩すというデメリットが生じます。
人間の口腔内には数百種類、数百億個もの常在菌が存在していて、これらが互いに牽制し合うことで健康な生態系を維持しています。
しかし、クロルヘキシジンや塩化セチルピリジニウムなどの強力な殺菌成分を頻繁に取り入れると、虫歯菌だけでなく、善玉菌まで無差別に死滅させてしまいます。
その結果、特定の耐性菌や真菌が異常増殖し、口腔カンジダ症などの感染症を引き起こしたり、口臭が逆に悪化したりすることがあります。
また一部の強力な洗口液の長期使用は、歯面や舌への着色を促進させたり、味覚を感知する味蕾を刺激して一時的な味覚障害を誘発したりする副作用も報告されています。
予防を急ぐあまり、口の中の自然な防御システムを破壊してしまうリスクに配慮しなければなりません。
消化器系への影響
糖質制限や虫歯菌の代謝抑制を目的として、キシリトールなどの糖アルコールを含むガムやタブレットを熱心に摂取することも、デメリットをもたらす場合があります。
キシリトールは、犬に対して強い毒性を持つことで知られています。
人間にとっても、一度に大量に摂取すると大腸の浸透圧が高まり、水分が腸内に引き込まれて一過性の下痢や軟便、腹痛、腹部膨満感を引き起こす原因になります。
特に胃腸が敏感な方や子どもは、少量の摂取でもお腹が緩くなりやすい傾向があります。
また市販されているキシリトール配合を謳う製品の中には、キシリトールの含有率が低く、他のクエン酸などの酸性成分や、虫歯の原因となる糖類が含まれているものもあります。
選び方を誤ると予防効果が得られないばかりか、酸によって歯が溶ける酸蝕歯を誘発するリスクすらあります。
そのため、予防食品に過度に依存するあまり、通常の食事バランスを損なったり、消化器系に負担をかけたりすることは避けるべきです。
食品の手軽さに隠された、体調不良や新たな歯のトラブルを招く危険性に注意が必要です。
まとめ
虫歯予防の方法が正しければ、これといったデメリットは生じません。
むしろ冒頭でも触れたように、将来的に歯を多く残せるという大きなメリットにつながります。
しかし、虫歯予防の知識が不足していると、虫歯予防を意識した行動が原因で口内環境を悪化させてしまうことがあります。
そのため、正しい知識を身に付けるためにも、歯科クリニックのブラッシング指導を受けることは必要不可欠だと言えます。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。