「虫歯予防をしなければいけない」ということは、特に大人であればほとんどの方が理解していることでしょう。
しかし、実際はついブラッシングをサボりがちになったり、定期検診に通わなかったりする方が多くいます。
では、なぜ虫歯予防の意識は低くなってしまうのでしょうか?
虫歯予防の意識が低くなる理由4選
虫歯予防の意識が低くなりがちな理由としては、主に以下のことが挙げられます。
・初期症状に痛みがないから
・効果がすぐに見えないから
・正しい知識が不足しているから
・忙しさやストレス
各項目について詳しく説明します。
初期症状に痛みがないから
虫歯予防の意識が低下する最大の理由は、初期の虫歯には痛みがなく、自分の歯が危機に瀕しているという実感を持てないことです。
人間の脳は、目の前にある明確な痛みや不快感には素早く反応しますが、自覚症状のない潜在的なリスクに対しては行動を起こしにくい習性があります。
虫歯は、歯の表面を覆う硬いエナメル質が酸によって溶かされることから始まりますが、この段階では神経まで達していないため、痛みやしみるような感覚は一切ありません。
鏡で口の中を見ても、奥歯の溝や歯と歯の隙間など、自分では見えにくい場所に発生することが多いため、専門知識がなければ異変に気づくことは不可能です。
このように「今は痛くないから大丈夫」という誤った安心感が生まれることで、毎日の丁寧な歯磨きやデンタルフロスの使用といった予防行動が次第におろそかになっていきます。
多くの場合、痛みが現れたときには虫歯がすでに神経の近くや内部まで進行していて、治療にも時間と費用がかかる段階になっています。
しかし、痛むまでは自分の健康が脅かされていると実感できないため、問題が起きる前の予防に対して高いモチベーションを維持することは心理的に難しいです。
結果として多くの方が放置したり、ケアの意識を低くしたりしてしまう原因となっています。
効果がすぐに見えないから
予防歯科の効果は、“虫歯がない健康な状態を維持する”という、いわば変化のない結果であるため、行動に対する達成感を得にくいことが挙げられます。
ダイエットや筋トレであれば、努力の成果が体重の減少や筋肉の見た目の変化として比較的すぐに現れるため、モチベーションを保ちやすいです。
一方虫歯予防は、毎日朝晩に時間をかけて歯を磨き、フロスを通すという手間の割には、得られる結果が“昨日と変わらない日常”です。
「頑張ってケアをしたから、歯が劇的に白くなった」というような分かりやすいプラスのフィードバックがありません。
このように、費やす労力に対して得をしたという実感が薄いため、人は次第に予防行動を面倒だと感じるようになります。
さらに数日ケアをサボったとしても、すぐに虫歯という実害が出るわけではないため、「1日くらい磨かなくても平気だろう」という油断が生まれやすくなります。
この行動したことによる即時的な報酬のなさと、サボったことによるペナルティの遅れという2つの要因が重なることで、毎日コツコツとケアを続ける意味を見失わせます。
つまり健康な状態が当たり前であると感じる環境こそが、皮肉にも予防意識を削ぐ要因になっているということです。
正しい知識が不足しているから
多くの方が「毎日ブラッシングをしていれば虫歯は防げる」と誤解していて、自分が行っているケアの不完全さや、本当の虫歯リスクを理解していません。
こちらも、予防の意識が低くなりがちない理由です。
幼少期から「歯を磨きなさい」とは教わりますが、「なぜ磨くのか」「どこに汚れが溜まりやすいのか」まで深く学ぶ機会は多くありません。
実際には、歯ブラシだけでは口内のプラークは約60%しか落とせないと言われていて、残りの40%は歯と歯の間に残ってしまいます。
デンタルフロスや歯間ブラシを使う習慣がなければ、毎日欠かさず磨いていても虫歯のリスクは高いままです。
また虫歯は歯磨き不足だけでなく、ダラダラと間食をする習慣や、口の渇き、唾液の分泌量の少なさなど、複数の要因が絡み合って発生します。
こうした正しい知識がないと、「自分は毎日磨いているから大丈夫」という思い込みが生まれます。
その結果、歯科クリニックでの定期検診を受ける必要性を感じなくなったり、自己流の雑なブラッシングだけで満足してしまったりして、予防意識が育たなくなってしまいます。
リスクを正しく評価できていないために、予防を自分にはあまり関係のない、優先度の低いものとみなしてしまうのです。
忙しさやストレス
現代人の多くは仕事や家事、育児、学業などに追われていて、生活の忙しさや精神的なストレスの中で虫歯予防の優先順位が下がってしまうことがあります。
1日の終わりには心身ともに疲弊していて、丁寧なオーラルケアに時間を割く心の余裕が失われがちです。
疲れているときは「早く寝たい」「横になりたい」という身体的な欲求が勝り、歯磨き適当に済ませたり、最悪の場合は磨かずに寝てしまったりすることが増えていきます。
特にストレスが溜まっている時期は、甘いお菓子や炭酸飲料、アルコールなどを摂取してリフレッシュしようとする回数が増える一方で、食後のケアは後回しにされやすくなります。
また歯科クリニックへの定期検診についても、忙しい日常の中ではわざわざ時間を作って行く場所としての優先度が低くなります。
痛みを伴う治療とは違い、予防のための検診は“今すぐ行かなくても困らないもの”とみなされ、スケジュールから簡単に排除されがちです。
このように、日々の生活習慣の乱れや時間的・精神的な余裕のなさが予防行動をサボる言い訳を生み出し、口内の健康管理に対する意識を低下させる原因となっています。
まとめ
虫歯予防の意識を高めるには、まず虫歯予防に関する正しい知識を得ることが大切です。
その上で、わかりやすい過度な効果を期待せず、地道に黙々と継続していく必要があります。
虫歯予防を行っても特にご褒美はありませんが、それは健康管理全般に対して言えることです。
自身の健康的な歯や便利な生活を守るため、長期的に続けていくものと割り切って考えましょう。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。