歯周病は、主に歯茎に悪影響を及ぼす疾患です。
歯茎がやわらかくなると、そこに生えている歯はグラグラになり、重症化すると歯が脱落することもあります。
では、実際本当に歯周病で歯が抜け落ちた場合、どうすれば良いのでしょうか?
今回はこちらの内容について解説します。
抜け落ちた場合の応急処置と歯科クリニックへの受診
歯が抜け落ちた直後は、まず口の中を清潔に保ち、傷口を悪化させないことが最優先です。
歯が抜けた後の穴は、出血や激しい炎症を起こしている可能性が高いため、気になっても指や舌で触らないようにしてください。
もし出血が続いている場合は、清潔なガーゼや丸めたティッシュを抜けた場所に当て、20〜30分ほど軽く噛んで圧迫止血を行います。
このとき、強くうがいをしすぎると血の塊が剥がれて止血が遅れるため注意が必要です。
事故などの外傷と異なり、歯周病で自然に抜けた歯は、歯根を支える歯組織や歯根膜がすでに細菌によって完全に破壊されています。
そのため、自分で無理に元の穴に戻そうとしてはいけません。自己判断で戻そうとすると細菌感染を悪化させ、周囲の骨の炎症を広げる原因になります。
また歯が1本抜けた状態を放置すると、両隣の歯が空いたスペースに向かって倒れ込んできたり、噛み合う対面の歯が伸びてきたりします。
これにより、残っている他の健康な歯にまで過度な負担がかかり、歯周病の悪化に拍車をかける悪循環に陥ります。
痛みがそれほどない場合でも、様子見は厳禁です。
できるだけ早く歯科クリニックに連絡して受診し、抜けた箇所の傷口を適切に処置して感染を防ぐ治療を受けてください。
残存歯を守るための徹底的な歯周病治療
歯が1本抜け落ちたということは、口の中全体の歯周病が重度にまで進行しているという重要なサインです。
これは単にその1本だけの問題ではなく、そのままにしておくと他の歯も次々とぐらつき始めて抜け落ちる、ドミノ倒しのような連鎖が起こる危険性が極めて高い状態と言えます。
そのため、抜けた部分の傷口が癒えたら、すぐに残っているすべての歯を対象とした本格的な歯周病治療を開始する必要があります。
歯科クリニックでは、歯茎の奥深くにこびりついた細菌の温床であるプラークや歯石を徹底的に除去するスケーリング、ルートプレーニングというプロケアを行います。
これにより、口腔内の歯周病菌の総数を大幅に減らし、歯を支える骨がこれ以上溶けていくのを防ぎます。
いくら抜けた部分に新しく立派な人工の歯を入れようとしても、土台となる周囲の歯や歯茎が歯周病でグラグラのままでは、せっかくの治療もすぐにダメになり長持ちしません。
治療の成功率を高めるためにも、口内全体の環境を清潔に整え、病気の進行を食い止めることが何よりも重要です。
日頃の生活習慣の見直しも含め、根本的な原因である歯周病菌と徹底的に向き合う必要があります。
欠損部を補う最適な治療法の検討
失った部分については放置せず、噛む機能を回復するための補綴治療を検討します。
主な選択肢はインプラント、入れ歯、ブリッジの3つです。
インプラントは人工の歯根を骨に埋め込む方法で、自分の歯のような噛み心地と審美性を再現でき、周囲の歯を削らないメリットがあります。
しかし自由診療のため高額になり、外科手術が必要な上に、土台となる骨が歯周病で溶けている場合は事前に骨を増やす手術が必要になることもあります。
入れ歯は、外科手術が不要で健康状態を問わず適用でき、治療期間が短いのが特徴です。
部分入れ歯の場合は両隣の歯に金属のバネをかけますが、取り外して清掃できる反面、噛む力が半分以下に落ちたり、バネをかける歯に負担がかかったりするデメリットがあります。
ブリッジは、抜けた歯の両隣の健康な歯を大きく削って土台にし、橋を架けるように一体型の人工歯を固定する方法です。
固定式のため違和感が少なくしっかり噛めますが、土台となる歯周病の歯に2倍以上の過度な負担がかかるため、将来的にその歯まで失うリスクが高まります。
それぞれの特徴、費用、そして何より自身の残っている歯や骨の状態を考慮しながら、歯科医師と慎重に相談して最適な方法を選ぶことが重要です。
歯を失わないためのセルフケアの改善と定期検診
無事に治療が終了し、新しい歯が入ったとしても、それで終わりではありません。
歯周病は再発しやすい慢性疾患であるため、これ以上歯を失わないための徹底したセルフケアの改善と、定期的な歯科メンテナンスの継続が不可欠です。
まず日々のブラッシングを見直し、歯ブラシだけでなくデンタルフロスや歯間ブラシを必ず併用してください。
歯周病によって下がってしまった歯茎の隙間や、新しく入れた入れ歯・ブリッジの周囲は特にプラークが溜まりやすいため、細心の注意を払ったケアが必要です。
またどれほどに丁寧に磨いていても、数ヶ月が経過すると口の中にはブラシが届かない頑固な細菌の膜や新たな歯石が形成されてしまいます。
これらは自宅のケアだけでは除去できないため、3〜4ヶ月に1回程度の頻度で歯科クリニックに通い、プロによる徹底的なクリーニングを受ける必要があります。
定期検診では、噛み合わせのバランスが崩れていないか、インプラントや入れ歯に不具合が生じていないかもチェックします。
プロのケアと毎日のセルフケアを両立させることこそが、残された大切な歯の寿命を延ばし、生涯にわたって口の健康と美味しい食事を守り続けるための防御策です。
まとめ
歯周病で歯が抜け落ちたとしても、素早く対処すれば歯の審美性や機能性を失わずに済む可能性があります。
しかし注意したいのは、一度抜け落ちた天然歯は元に戻せないという店です。
つまり審美性や機能性は変わらなくても、完全に以前と同じ状態にするのは不可能ということです。
このことを肝に銘じ、普段から歯周病治療を徹底しなければいけません。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。