虫歯治療の中でも大掛かりな治療を受ける場合、患者さんは慎重に治療方針などを決定してほしいものです。
このとき、複数の歯科医師の意見を聞くセカンドオピニオンを検討する方もいるかもしれませんが、セカンドオピニオンには失礼にあたる行為がいくつか存在します。
今回はこちらの内容について解説します。
虫歯治療のセカンドオピニオンで失礼にあたる行為4選
虫歯治療のセカンドオピニオンで失礼にあたる行為としては、主に以下のことが挙げられます。
・主治医に対する批判や悪口を伝える
・主治医に内緒で受診する
・安さや手軽さだけを求めて比較する
・治療のやり直しをその場で強要する
各項目について詳しく説明します。
主治医に対する批判や悪口を伝える
セカンドオピニオンの本来の目的は、現在の診断や治療方針について別の医師の客観的な意見を求めることです。
しかし、相談先の歯科医師に対して「前の歯医者の腕が悪い」「説明が不親切で信用できない」といった主観的な批判や悪口をぶつけてしまうのは大きなマナー違反にあたります。
医療従事者も一人の人間であり、プロフェッショナルとしてのネットワークを持っています。
他院の誹謗中傷を聞かされることは、決して気持ちの良いものではありません。
また、“不満ばかりを言う人”という印象を与えてしまうと、相談先の医師との信頼関係を最初から損ねてしまうリスクがあります。
客観的な事実に基づかない感情的な批判は、セカンドオピニオンの場をただの愚痴の聞き役に変えてしまい、建設的なアドバイスを引き出す妨げになります。
転院や意見を求める理由を聞かれた際も、感情論ではなく、事実と自分の希望をベースに冷静に伝えることが大切です。
主治医に内緒で受診する
現在の主治医に気まずさを感じるあまり、セカンドオピニオンを受けることを一切伝えず、いわゆる隠れて他院を受診する行為は避けるべきです。
これは主治医に対する不義理になるだけでなく、自分自身の治療において大きな不利益を被る原因になります。
適切なセカンドオピニオンを行うためには、これまでの治療経過、撮影したレントゲン写真やCTデータ、これまでに使用した薬剤の記録といった情報が不可欠です。
これらがない状態で新しい歯科クリニックに行くと、ただの初診になってしまいます。
再度同じレントゲン撮影を行うことで無駄な費用や被曝が発生しますし、歯茎の内部や過去の神経の処置といった目に見えない経過を新しい医師が正確に把握することは困難です。
現在の歯科医師に「セカンドオピニオンを受けたいので、紹介状やレントゲンデータをいただけますか」と正直に申し出ることが、双方の医師に対する礼儀です。
安さや手軽さだけを求めて比較する
セカンドオピニオンを、どこが一番安く治療してくれるかという価格交渉の道具や、単なる見積もり合わせのように扱う行為は、医師の技術や診断に対する敬意を欠いています。
虫歯治療、特に神経に達するような深い虫歯や抜歯の可能性があるケースでは、歯科医師の経験や設備、採用している治療コンセプトによって費用や期間が大きく異なります。
自由診療であれば、なおさらクリニックごとの価格差は開きます。
しかし医療は物品の購入とは異なり、技術料や使用する材料の質、将来的な歯の寿命を見据えたアフターケアまで含まれたものです。
「あっちのクリニックではもっと安くできると言われたが、ここはどうなのか」といった、価格面だけを比較するような質問は、医師の医療技術への侮辱と捉えられかねません。
相談する際は、費用の安さだけを基準にするのではなく、なぜその費用がかかるのかといった医療の本質的な部分に目を向けて質問を組み立てる必要があります。
治療のやり直しをその場で強要する
セカンドオピニオンは治療方針に関する意見を聞くための場であり、その場で新しい医師に治療を開始してもらったり、現在の治療をやり直させたりするための場ではありません。
相談に訪れたその日に「今すぐここで削り直してほしい」と強要することは、セカンドオピニオンのルールを逸脱した失礼な行為です。
多くの歯科クリニックでは、セカンドオピニオン専用の相談枠を設けていて、これは診察・相談のための時間として確保されています。
実際の治療を行うための器具や時間の準備は想定されていません。
また十分な検査や経過の把握をしないまま、患者さんの勢いに押されてその場で治療を介入することは、医療安全の観点からも極めて危険です。
まずは提示された意見を持ち帰り、現在の主治医の意見とじっくり比較検討することが本来のステップです。
検討した結果、相談先のクリニックへ完全に転院したいと考えた場合は、セカンドオピニオンの場とは別に、改めて正式な転院の手続きと「初診・治療の予約を取るのがマナーです。
まとめ
一般的な虫歯治療で、セカンドオピニオンを受けるケースはそれほど多くありません。
しかしどのような場合でも、患者さんが納得するためにはセカンドオピニオンを受ける権利があります。
このとき、患者さんは自己中心的な考えで手あたり次第診察を受けるようなことはせず、現在治療中の歯科医師に敬意を払わなければいけません。
患者さんが権利を行使するだけとはいえ、医療は人対人だということを忘れないようにしましょう。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。