虫歯と聞くと、歯が痛むもの、歯が黒く変色するものといったイメージを持つ方が多いかと思います。
もちろんこちらは間違ってはいないのですが、実は虫歯には複数の種類があり、それぞれ特徴が異なります。
今回は、少し変わった虫歯の種類について解説したいと思います。
変わった虫歯の種類4選
変わった虫歯としては、主に以下のものが挙げられます。
・急性齲蝕
・慢性齲蝕
・多発性齲蝕
・酸蝕症
各項目について詳しく説明します。
急性齲蝕
急性齲蝕は、その名の通り非常に速いスピードで進行する虫歯の種類です。
主に子どもや若年層によく見られる傾向があります。
若い歯は生えてから間もないため、エナメル質や象牙質がまだ完全に成熟しておらず、大人に比べてやわらかい性質を持っています。
そのため、虫歯菌が出す酸に対して抵抗力が低く、一気に深いところまで進行してしまいます。
急性齲蝕の特徴として、虫歯になっている部分の色が黒くならず、白っぽかったり薄い黄色や茶褐色をしていたりします。
見た目が周囲の健康な歯と馴染んでしまうため見落としやすく、気づいたときにはすでに神経の近くまで達していることが多々あります。
進行が早いため、冷たいものがしみるなどの初期症状を感じたら、一刻も早く歯科クリニックを受診する必要があります。
また痛みなどの自覚症状が急激に強くなることも特徴で、昨日まで平気だったのに突然夜も眠れないほどの激痛に襲われるといったケースも少なくありません。
このタイプの虫歯を防ぐには、短期間での徹底的な予防アプローチが必要です。
3ヶ月に1回など短いスパンでの歯科定期検診を欠かさず受け、プロによるフッ素塗布を行い、歯の表面を急速に強化し、酸に負けない強い歯を育てることがもっとも重要です。
慢性齲蝕
慢性齲蝕は、急性齲蝕とは対照的に、非常にゆっくりとしたスピードで進行する虫歯です。
主に中高年以降の大人に多く見られます。
大人の歯は長年の間に唾液中のミネラルを取り込んで硬くなっていて、酸に対する抵抗力が比較的高いため、すぐには深くまで進行しません。
虫歯の進行が遅い間、歯の内部では防御反応として修復象牙質という新しい壁が作られ、神経を保護しようとします。
そのため、虫歯が大きく見えても痛みを伴わないケースが多いのが特徴です。
患部の組織は硬く乾燥していて、色は真っ黒や濃い茶褐色に変色するため、視覚的に発見しやすいというメリットがあります。
痛みが少ないからと放置されがちですが、確実に歯は破壊されていくため、早期の適切な処置が必要です。
慢性齲蝕は、何年も現状維持を保っているように見えることもありますが、体調不良やストレス、加齢による唾液の減少などが引き金となり、ある日突然急性化することがあります。
また、見た目が黒いために審美的な問題を生じやすく、特に前歯などにできると笑顔の印象を大きく損ねてしまいます。
痛みがない段階で早期に発見し、最小限の切削量でプラスチックなどを詰めて修復することが、歯の寿命を延ばすことにつながります。
多発性齲蝕
多発性齲蝕は、口の中の広範囲にわたって、非常に多くの歯にほぼ同時多発的に発生する重度の虫歯状態のことです。
特に幼児期に見られるものは哺乳瓶齲蝕とも呼ばれ、哺乳瓶でジュースやスポーツドリンク、乳酸菌飲料などをダラダラと長時間飲ませ続けることが主な原因となります。
また成人であっても重度のドライマウスを患っている方や、極端に乱れた食生活、極めて不十分な口腔ケアを続けている場合に発症します。
唾液には口の中の酸を中和し、歯を修復する再石灰化の役割がありますが、その自浄作用のキャパシティを遥かに超えるほど糖分を摂取し続けることで引き起こされます。
短期間で多くの歯の神経が死んでしまうため、生活習慣の根本的な見直しが必要です。
また多発性齲蝕に陥ると、一本ずつの治療を進めても別の歯がすぐに虫歯になってしまうため、治療がいつまでも終わらないという悪循環に陥ります。
そのため、歯科クリニックの局所的な治療と並行して、専門家による厳格な栄養指導やブラッシング指導を受け、口内環境を根本から変える必要があります。
酸蝕症
酸蝕症は、厳密には虫歯菌が原因ではなく、食べ物や飲み物に含まれる酸によって歯全体が化学的に溶かされてしまう症状です。
近年、生活習慣病の一種として注目されています。
コーラや炭酸飲料、柑橘類の果物、お酢、ワイン、スポーツドリンクといった酸性度の高い食品を過剰に、あるいは時間をかけてちびちびと摂取する習慣がある人に多く見られます。
また摂食障害による嘔吐や胃食道逆流症によって、強い胃酸が頻繁に口の中に逆流することでも歯が激しく溶かされます。
虫歯菌による局所的な穴とは異なり、歯の表面全体が広範囲にわたってすりガラスのように薄くなり、黄ばんで見えたり、歯がしみやすくなったりするのが特徴です。
そのため、原因となる食習慣の改善や医療機関での治療が不可欠です。
酸蝕症が進むと、歯の最表層であるエナメル質が消失し、内部の黄色い象牙質が丸見えになるため、見た目が著しく損なわれます。
さらに歯の先端が透明になったり、ギザギザに欠けたりすることもあります。
対策としては、酸性の飲食物を口にした後はすぐに水でうがいをすることや、酸によって歯のやわらかくなっているため、食後30分ほど時間を置いてから歯を磨くのがベストです。
まとめ
虫歯は虫歯でも、自身がどの虫歯を発症しているのかによって、具体的な対応などが変わってくる可能性があります。
もちろん、どれも虫歯であるため、治療しなければいけないことに変わりはありません。
またそもそも虫歯は発症させないことが大事であるため、自宅でのセルフケアと歯科クリニックでの定期検診は怠らないようにしてください。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。