夏も本番に差し掛かっていますが、この時期に注意したいのが夏風邪です。
夏風邪は高熱や喉の強い痛み、消化器症状や口内炎などを伴うことが多く、発症すると非常に厄介です。
では、夏風邪を引いていても虫歯治療は受けられるのでしょうか?
今回はこちらの点について詳しく説明します。
治療の可否を判断する症状の目安
夏風邪の症状があるときに歯科治療を受けられるかどうかは、具体的な症状の重さとそれらが引き起こす治療中のリスクによって総合的に判断されます。
目安として37.5度以上の発熱がある場合や、激しい咳、ひどい鼻詰まり、喉の強い痛みがある場合は、治療を延期するのが一般的です。
虫歯治療では、数十分~1時間近く口を大きく開けた状態を維持しなければなりません。
特に鼻詰まりが深刻な場合、治療中に口呼吸ができなくなるため、水が喉に溜まった際に窒息感を覚えたりパニックに陥ったりする危険性があります。
また治療中に突然激しい咳が出ると、ドリルなどの鋭利な器具で口の中の粘膜や歯茎を傷つけてしまう大事故につながりかねません。
一方で、熱がなく軽い鼻水や喉の違和感程度で、本人に体力の余裕があるならば治療可能なケースもあります。
しかし、夏風邪はエアコンによる冷えや寝不足から急激に悪化することも多いため、自己判断での強行は禁物です。
少しでも普段と違う体調の異変や不安を感じた場合は、来院する前に必ず歯科クリニックへ電話を入れ、現在の症状を詳しく伝えた上で受診の可否を相談しましょう。
感染拡大防止と歯科クリニックへの配慮
虫歯治療は、患者さんと医療従事者が非常に近い距離で向き合って行う医療行為です。
さらに歯を削るタービンや超音波スケーラーなどの器具を使用する際、患者さんの唾液や血液、水が混ざり合った微細な水しぶきが、診療室内に飛散するという特性を持っています。
もし患者さんが夏風邪に感染している状態で治療を受けると、たとえ医療従事者がマスクなどを着用して防護していたとしても、飛沫感染や接触感染のリスクが跳ね上がります。
歯科医師や歯科衛生士が感染して休職を余儀なくされると、クリニックの診療体制が崩壊し、他の多くの患者さんの予約や治療にも甚大な悪影響が及びます。
また免疫力が低下している高齢者や基礎疾患を持つ他の患者さんが待合室に同席していた場合、その方々に風邪をうつしてしまう二次感染の危険性も否定できません。
体調不良の際に無理をして受診せず、周囲への感染拡大を防ぐために自宅で静養することは、医療現場の安全を守り、社会全体の健康に配慮するための極めて重要なマナーです。
体調不良時の治療に伴うリスクと影響
身体が夏風邪のウイルスと戦っている最中は、全体の免疫力や抵抗力が著しく低下しています。
このコンディションが悪い状態で虫歯治療、特に外科治療を受けると、細菌が侵入しやすくなり、治療後に通常以上の強い腫れや激しい痛みが引き起こされるリスクが高まります。
また、傷口の塞がりや治癒のスピードが大幅に遅れる原因にもなります。
さらに市販の風邪薬などを服用している場合は、歯科クリニックで局所麻酔を使用したり、痛み止めを処方されたりする際の飲み合わせに注意が必要です。
麻酔の効き目が悪くなったり、予期せぬ副作用が出現したりすることがあります。
加えて、体力が落ちているときに虫歯治療特有の緊張感やストレス、恐怖心が加わると、脳貧血を起こしてめまいや吐き気を催すこともあります。
安全で心身に負担のない治療を受けるためには、身体が万全な状態であることが大前提となります。
キャンセルや日程変更の適切な手順
夏風邪によって虫歯治療の予約をキャンセル、または日程変更したい場合は、受診予定日の前日まで、あるいは当日の朝一番に連絡を入れるのが適切な手順です。
連絡なしの無断キャンセルは、その時間を準備して待っていた歯科医師やスタッフに大きな迷惑をかけ、信頼関係を損ねるため、絶対に避けてください。
電話の際は「夏風邪を引いてしまい、発熱と咳の症状がある」といった現在の具体的な状況を正直に伝えます。
歯科クリニック側も感染対策と患者の安全を最優先に考えているため、無理に来院を促すことはなく、快く数日~1週間後への予約変更を提案してくれます。
ただし「歯がズキズキして眠れない」「応急処置だけでもしてほしい」といった、どうしても今すぐの対応が必要な激しい痛みがある場合は、その旨も合わせて相談してください。
隔離スペースを用意したり、他の患者さんとの接触を避ける時間帯を指定したりするなど、感染対策を徹底した上で痛みを抑える処置を行ってくれることもあります。
まずは我慢せず、現在の体調と歯の痛みの状況をセットで伝えることがスムーズな解決への近道です。
まとめ
冒頭でも触れた通り、夏風邪はとても厄介な疾患です。
体調が著しく悪化するケースが多いため、夏風邪を引いた状態での虫歯治療には注意しなければいけません。
もちろん夏風邪だけでなく、体調が優れない場合は、無理をして虫歯治療を受けなくても良いケースが多いです。
体調が良くなってから治療を受けても、軽度の虫歯であれば問題なく治癒するケースがほとんどです。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。