虫歯のリスクは、完全にゼロにすることはできません。
毎日食事を摂る以上、虫歯の原因となるプラークや虫歯菌は、ブラッシングを行っても口内に少なからず存在するからです。
また虫歯の発症や症状には、食欲が深く関係しています。
今回は、虫歯と食欲の主な関係性について解説します。
咀嚼痛による回避行動
虫歯を発症することでものを噛むたびに走る激痛が“食べる=苦痛”という学習を脳に植え付け、本能的に食欲を抑制します。
つまり、虫歯を発症すると食べる量が減るということです。
温度刺激への過敏反応
虫歯がある程度進行すると、冷たい飲料や熱いスープを避けるようになり、食事のレパートリーが制限され、食欲を失いやすくなります。
味覚の変化
重度の虫歯で歯髄が壊死し、膿が出始めると、口の中に常に不快な味や臭いが漂い、料理の風味を損ないます。
これにより、食事に対して積極的ではなくなります。
消化効率の低下
虫歯の痛みを避けて丸飲みする習慣がつくと、胃腸への負担が増え、慢性的な胃もたれから食欲不振を招きます。
精神的ストレスの蓄積
虫歯による慢性的な歯痛は、自律神経を乱し、摂食中枢という脳の「食べたい」と感じる部位の働きを低下させます。
糖分への執着
チョコレートやキャラメルなど、粘着性の高い糖分への欲求は虫歯菌の活動を最速で活性化させます。
ダラダラ食べの習慣
空腹感とは無関係に、常に何かを口にしたいという欲求は、口内を長時間酸性の状態に保ち、再石灰化のチャンスを奪います。
酸味のある食べ物の嗜好
健康志向であることを理由に酢やレモンなどに対する食欲が強いと、酸蝕症を引き起こし、歯を溶かす原因になります。
深夜の食欲
就寝前は唾液の分泌量が減るため、深夜の食欲に任せた食事は虫歯リスクを劇的に高めます。
やわらかいものへの偏食
パンや麺類など、噛む力の不要な炭水化物ばかりを好むと、歯自体の自浄作用が低下し、汚れが溜まりやすくなります。
唾液分泌の減少
食べない時間が長いと、唾液が出る機会が減り、口内の自浄作用が失われて虫歯が加速します。
栄養不足による免疫低下
食欲不振でタンパク質やビタミンが不足すると、歯肉の防御力が落ち、虫歯菌の侵入を許しやすくなります。
睡眠の質の低下
夜間の痛みによる睡眠不足はホルモンバランスを崩し、異常な食欲、あるいは食欲の喪失を招きます。
菌血症のリスク
虫歯を放置すると菌が血液に入り、全身の炎症を引き起こすことがあります。
こちらが倦怠感や全般的な食欲低下に繋がります。
上顎洞炎の発症
上の奥歯の虫歯が鼻の副鼻腔に達すると、顔面痛や鼻詰まりから、嗅覚と連動した食欲が失われます。
30代の多忙による影響
30代は仕事のストレスから甘いものやアルコールの摂取が増え、食生活の変化が虫歯を急増させます。
高齢者の低栄養
高齢者の方は、虫歯で噛めなくなることが食べることの諦めに繋がり、生存意欲に関わる深刻な食欲低下を招きます。
摂食障害との関連
過食や嘔吐の習慣は、胃酸による歯の溶解(酸蝕)と、過剰な糖分摂取の両面から歯を破壊します。
子どもの偏食と虫歯
特定の甘いお菓子しか食べない食欲は、乳歯をボロボロにし、将来の永久歯の歯並びや食習慣にまで悪影響を与えます。
妊婦の悪阻と食欲変遷
女性の場合、妊娠中の食好みの変化や頻繁な小分け摂取が、口内環境を悪化させる典型的な要因になります。
治療後の麻酔と食事のタイミング
麻酔が切れる前の食事は、頬を噛むなどの怪我を招くため、1〜2時間は控えるのが一般的です。
そのため、食欲を抑えられるように、虫歯治療前にある程度食事を摂っておく必要があります。
治療直後の過敏症状
虫歯治療後、一時的に歯が染みる現象が起こることがあり、これが数日間食欲を鈍らせる場合があります。
咀嚼機能の回復による食事の楽しみ
虫歯治療によって痛みがなくなると、今まで避けられていた硬いものや繊維質の高い野菜を美味しく食べられるようになります。
味覚の正常化
虫歯治療を受けたことで口内の炎症が収まると、食材本来の味を感じる能力が回復し、食欲が健康的な形へ戻ります。
噛み合わせと満足感
虫歯予防を徹底することで手に入れたしっかり噛める歯は、満腹中枢を刺激しやすく、食べ過ぎを防いで健康的な食欲を維持します。
水分摂取の重要性
人は、喉の渇きを食欲と勘違いすることがあります。
そのため、水を飲み口内を洗い流すことで、偽の食欲と虫歯リスクを抑えられます。
QOL(生活の質)の向上
歯の健康は、単なる栄養摂取を超え、人との会食を楽しむといった“社会的な食欲”を満たす基盤となります。
まとめ
虫歯と食欲は、さまざまなパターンで関係していることがわかっていただけたかと思います。
食欲が虫歯を引き起こすこともあれば、虫歯の発症や回復や食欲の減退・増進につながるケースもあります。
つまり、虫歯と食欲は相互関係にあるということです。
そのため、日頃から食べすぎを控えつつ、丁寧なセルフケアで歯を守ることを意識するのが大切です。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。