普段トレーニングをする方にとって、欠かせない食品の一つにプロテインが挙げられます。
プロテインは手軽な栄養管理ができ、ダイエットや美容のサポートをしてくれるだけでなく、運動の効果も最大化してくれます。
しかし、プロテインの摂取は、以下の意外な理由で虫歯のリスクを高めることがあります。
プロテインの摂取が虫歯のリスクを高める意外な理由4選
プロテインは、以下の意外な理由で虫歯のリスクを高めることがあります。
・就寝中の唾液分泌量の減少
・トレーニング中の口呼吸による口内の乾燥
・少しずつ頻繁に飲むことによる口内の酸性化
・安心感によるセルフケアの怠慢
各項目について詳しく説明します。
就寝中の唾液分泌量の減少
筋肉の成長や疲労回復を狙って、就寝直前にプロテインを飲む人は非常に多いです。
睡眠中は成長ホルモンが分泌されるため、そのタイミングに合わせてタンパク質を補給することは筋肉にとっては理想的ですが、歯にとっては最悪のタイミングです。
人間は睡眠中、唾液の分泌量が起きているときに比べて極端に減少します。
唾液には、口の中の汚れを物理的に洗い流す自浄作用、酸性に傾いた口腔内を中性に戻す緩衝作用、細菌の増殖を抑える抗菌作用があります。
就寝直前にプロテインを飲み、そのままあるいは不十分なブラッシングだけで眠ってしまうと、減少した唾液ではプロテインの成分や酸を中和しきれません。
口の中がカラカラに乾いた状態で、プロテインの糖質やタンパク質が虫歯菌の餌になり続け、一晩中歯が酸にさらされることになります。
この唾液の減少とプロテインの残留が組み合わさることで、日中に比べて何倍も虫歯が進行しやすい危険な環境が完成します。
就寝前のプロテイン摂取は、適切なケアを怠ると、一晩で虫歯リスクを爆発的に高める最大のデメリットになり得ます。
トレーニング中の口呼吸による口内の乾燥
プロテインを熱心に摂取する人の多くは、日常的に激しいウエイトトレーニングやスポーツを行っています。
高強度の運動中やその直後は、息が上がりやすく、どうしても鼻呼吸ではなく口呼吸になりがちです。
口呼吸を頻繁に行うと、外気が直接口の中に入り込むため、口腔内の水分が蒸発して急激に乾燥します。
これにより、唾液が干からびてしまい、その効果が著しく低下します。
この口が渇いたタイミングで、トレーニング直後のゴールデンタイムと称してプロテインを補給すると、乾燥した歯面にプロテインのドロドロした液体がダイレクトに吸着します。
ただでさえ唾液による洗い流し効果が期待できない状態であるため、プロテインの成分が瞬時に歯にこびりつき、濃縮された状態で虫歯菌の栄養源になってしまいます。
スポーツや筋トレによる口呼吸での乾燥という肉体的な状態と、プロテイン摂取という行為が重なることで、通常の食事時よりもはるかに過酷な環境が歯に課されます。
少しずつ頻繁に飲むことによる口内の酸性化
プロテインの吸収効率を高めるため、または水分補給の代わりに、1回分のプロテインを数時間かけて少しずつ“ちょこちょこ飲み”する手法を取る人がいます。
これは栄養学的には血中アミノ酸濃度を一定に保つメリットがあるかもしれませんが、歯科衛生の観点からは極めて危険な行為です。
人間の口内は、何かを食べたり飲んだりするたびに酸性に傾き、その後20~30分ほどかけて唾液の力でゆっくりと中性に戻っていきます。
しかし、数分おきあるいは数十分おきにプロテインを口に含んでいると、口腔内が中性に戻るチャンスが完全に失われます。
つまり、プロテインを飲んでいる数時間の間、お口の中はずっと歯が溶け続ける臨界pH以下の危険地帯を維持されるということです。
1回で飲み終えれば1回分のダメージで済むものが、小分けにして飲むことで、歯にとっては絶え間なく酸の攻撃を受け続ける拷問のような状態に変わります。
この頻回な摂取は、結果としてブラッシングの効果を打ち消すほど強力に虫歯を進行させるため、飲み方の工夫を誤ると致命的なデメリットをもたらします。
安心感によるセルフケアの怠慢
プロテインは健康食品、栄養補助食品としてのイメージが非常に強く、ジャンクフードや一般的な甘いお菓子、ジュースなどと比べて身体に良いものとして認識されがちです。
この“健康に良いものを摂取している”という心理的な安心感が落とし穴になります。
コーラやケーキを食べた後は「虫歯になりそうだから歯を磨こう」という危機感が働きやすいです。
一方、プロテインを飲んだ後は“プロテイン=タンパク質=栄養”という図式が頭をよぎり、罪悪感が薄れるため、食後のオーラルケアに対する意識が甘くなりがちです。
特にサプリメント系は、飲み終わった後に「ただの栄養ドリンクを飲んだだけ」と思い込み、水で口をゆすぐことさえ忘れてしまうケースが多々見られます。
しかし、実際にはここまで述べてきた通り、虫歯を引き起こす要素が多分に含まれています。
製品のクリーンなイメージに騙され、口の中のケアを怠ってしまうという心理的な油断が生じることこそ、プロテインが引き起こす隠れた虫歯リスクのデメリットです。
まとめ
プロテインは身体づくりに欠かせないものですが、口内環境を悪化させ虫歯を引き起こす可能性があります。
そのため、摂取のタイミングや摂取後のブラッシングなどについては、強く意識しなければいけません。
またプロテイン自体にもカロリーが含まれているため、間食として飲みすぎると単純にカロリー過多で太ってしまうことも考えられます。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。