歯周病はあらゆる生活習慣と関連があり、特にタバコは関係性が深いです。
喫煙をしている方は、歯周病の発症や悪化のリスクが高まり、逆に禁煙すれば大幅な改善効果が見込めます。
今回は、タバコをやめることによる歯周病への影響を中心に、さまざまな角度から解説します。
タバコが歯周病を悪化させるメカニズム
喫煙が歯周病に与える悪影響は非常に深刻であり、タバコは百害あって一利なしの代表格と言えます。
タバコの煙に含まれるニコチンは、血管を収縮させる強い作用を持っています。
これにより、歯茎に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなり、歯周病菌と戦う免疫細胞の働きも低下します。
また、一酸化炭素が血液中の酸素運搬を妨げ、さらにタールなどの有害物質が歯茎の細胞を直接的に傷つけます。
結果として、口の中の抵抗力が著しく低下し、歯周病菌が繁殖しやすい環境が作られます。
喫煙者は非喫煙者と比較して、歯周病にかかるリスクが約3倍~5倍に跳ね上がると言われていて、進行スピードも非常に速いのが特徴です。
タバコの有害成分が歯茎のコラーゲンを破壊し、歯を支える土台となる歯槽骨という骨の吸収を早めてしまうからです。
このように、タバコは歯周病の発生から重症化に至るまでのすべてのプロセスにおいて、もっとも強力な促進因子として作用しているのです。
ちなみに、ここでいうタバコとは一般的に紙巻きタバコのことを指していますが、加熱式タバコや電子タバコであれば安全とは言い切れません。
あくまで、紙巻きタバコに比べると、歯周病をはじめとする疾患への影響におけるエビデンスが少ないというだけです。
禁煙によって歯茎に現れる最初の変化
タバコをやめると、比較的早い段階で口の中に明確な変化が現れ始めます。
禁煙後、数日から2〜4週間程度でニコチンによる血管の収縮が解消され、歯茎の血流量が正常な状態へと回復します。
血流が良くなると、それまでタバコの作用によって隠されていた歯茎の炎症がはっきりと表面化することがあります。
具体的には、歯茎の赤みや腫れ、歯磨きをした際の出血などが一時的に強くなる現象が見られます。
これは決して病状が悪化しているわけではなく、体が本来の免疫反応を取り戻し、炎症と戦い始めたという回復のサインです。
血流の回復に伴い、歯茎の細胞に必要な栄養素や免疫細胞がしっかりと供給されるようになるため、歯周病の初期段階であれば、この時期から改善の兆しが見え始めます。
タバコ特有の黒ずんだ歯茎も、禁煙を続けることで少しずつ健康的なピンク色へと戻っていきます。
禁煙と歯周病治療のシナジー効果
禁煙のもっとも大きなメリットは、歯科クリニックでの歯周病治療の効果を最大限に引き出せる点にあります。
喫煙を続けている状態で歯石除去などの基本的な歯周病治療を行っても、歯茎の治癒力が弱いため、治療の成果がなかなか上がらず再発を繰り返す可能性が高いです。
しかし、禁煙に成功した状態で治療を受けると、歯茎が本来持つ自然治癒力や免疫機能が回復しているため、治療に対する反応が劇的に良くなります。
歯周組織の再生能力が高まることで、歯と歯茎の間の溝である歯周ポケットが浅くなりやすく、健康な状態へと引き締まりやすくなります。
歯科医療の現場においても、禁煙を指導した上での治療と、喫煙を続けたままの治療では、長期的な予後に大きな差が出ることが確認されています。
禁煙は歯周病治療を成功させるための前提条件と言っても過言ではなく、治療期間の短縮や治療費の節約にもつながります。
歯周病の根本的な改善とリスクの低下
タバコをやめることは、歯周病を一時的に改善するだけでなく、将来的に歯を失うリスクを大幅に下げる根本的な解決策となります。
禁煙後、1年ほど継続して歯科クリニックで適切なケアとメンテナンスを受けることで、歯茎の状態は非喫煙者とほぼ同等の健康な状態にまで回復すると言われています。
歯周病の進行を食い止めることで、グラグラしていた歯が安定し、しっかり噛める状態を維持しやすくなります。
さらに、喫煙は歯の治療後におけるインプラント周囲炎などのトラブルを引き起こすリスクも高めますが、禁煙によってこれらのリスクも軽減されます。
もちろん、一度失われてしまった歯茎の退縮や骨の減少を完全に元通りにするのは難しい場合もありますが、それ以上の破壊を防ぐことは可能です。
禁煙という決断が、口の中全体の寿命を延ばし、生涯にわたって自分の歯で食事を楽しむための強力な土台作りとなります。
ちなみに、歯科クリニックやその他のクリニックには禁煙外来というものが存在し、こちらは科学的根拠に基づいた成功率の高い禁煙のための処置が施されます。
まとめ
結論からいうと、タバコをやめることで歯周病の状態は大幅に改善します。
一度重度にまで進行してしまった歯周病は、完全に回復させることが難しいですが、それでも喫煙を続けるよりは禁煙する方が状態は明らかに良くなります。
ただし本当に口内の健康を意識するのであれば、歯周病を発症する前に歯科クリニックで適切なクリーニングを受け、タバコも吸わないこと
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。