ギャンブルが趣味の方の中には、パチンコや競馬、ボートレースなど、あらゆるギャンブルに興じている方も多いかと思います。
また一見無関係のように見えますが、実はギャンブルは虫歯と関係性を持っています。
今回は、こちらの関係について詳しく解説します。
神経伝達物質と唾液分泌の低下
ギャンブル特有のスリルや興奮は、人間の脳内でドーパミンやアドレナリン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質を過剰に放出させます。
これらの物質が大量に分泌されると、自律神経のうち交感神経が極度に優位な状態となり、身体は一種の“戦闘モード”に入ります。
このとき、消化器官の一部である唾液腺の働きが抑制され、唾液の分泌量が劇的に減少してしまいます。
唾液には、口の中の食べカスを洗い流す自浄作用、酸性に傾いた口腔内を中性に中和する緩衝能、虫歯菌の活動で溶けかけた歯の表面を修復する再石灰化作用があります。
しかし、ギャンブルに熱中して口の中がカラカラに渇いた状態が何時間も続くと、これらの防御機能が一切機能しなくなります。
さらにパチンコ店やカジノといった空間では、液晶画面を強い緊張感を持って凝視し続けるため、無意識に口呼吸になりやすく、口内の乾燥はさらに加速します。
このように自律神経の乱れが引き起こす慢性的な唾液不足は、虫歯菌が排泄する酸によってエナメル質を急速に溶かす最大の引き金となり、虫歯を多発させる原因になります。
不規則な食生活と糖分摂取の増加
ギャンブルに依存している方は、ゲームのプレイ時間や軍資金を優先するあまり、きちんとした栄養バランスの取れた食事を摂らなくなる傾向が極めて強いです。
特にパチンコやスロット、カジノなどに没頭している最中は、手を止めることなく手軽にエネルギーを補給できる食品や飲料が選ばれやすくなります。
具体的には、砂糖が大量に含まれた缶コーヒー、炭酸飲料、エナジードリンク、あるいはスナック菓子や菓子パンなどがその代表例です。
これらの食品は糖分や精製された炭水化物の塊であり、虫歯菌にとっては最高の栄養源となります。
通常人間の口内は食事の後に酸性に傾きますが、時間をかけて少しずつ元に戻ります。
しかし、ギャンブルをしながらこれらの飲食物をダラダラと断続的に摂取することで、口の中は常に歯が溶けやすい強酸性の状態に晒され続けることになります。
さらにギャンブルによる不規則な生活習慣は、食事の時間そのものをバラバラにさせ、夜食の習慣や、勝敗のストレスによる過食などを引き起こします。
ビタミンやミネラルが慢性的に不足した身体は、歯を支える歯茎の抵抗力も低下させ、口腔環境の悪化に拍車をかけることになります。
口腔ケアの軽視と衛生管理の崩壊
ギャンブルへの強い執着や依存症を発症すると、脳内の報酬系が異常をきたし、日常生活におけるあらゆる優先順位が著しく歪んでしまいます。
頭の中が常に次のレースの予想、失った金の回収、過去の勝ち体験のことで支配されるため、自己管理能力や衛生観念が著しく低下し、毎日のパーソナルケアが後回しになります。
もっとも顕著に現れるのが、夜間のブラッシングの放置です。
深夜までパチンコ店に滞在したり、自宅でネット投票を続けたりして疲労困憊のまま、大負けしたショックで自暴自棄になり、ブラッシングせずに寝てしまうケースが増加します。
就寝中はもともと唾液の分泌量が自然に減少するため、ブラッシングをせずに寝ることは、口の中の虫歯菌に対して無限の繁殖環境と時間を与えることを意味します。
また朝の洗面や食後のブラッシングといった基本的なルーティンすら面倒に感じるようになり、口の中にはプラークが常に停滞するようになります。
プラークは細菌の塊であり、これが除去されずに歯の表面に留まり続けることで、エナメル質は常に酸に晒され、あっという間に虫歯の温床が作られていきます。
経済的困窮による歯科クリニック受診の遅延
ギャンブルによる継続的な出費や多重債務は、個人の経済基盤を激しく揺るがします。
生活費すら困窮するような極限状態に陥ると、支出の優先順位が変化し、医療費特に命に直接関わらないと判断されがちな歯科費用は真っ先に削減の対象となってしまいます。
“歯が少し痛む”、“冷たいものが染みる”といった虫歯の初期サインがあっても、手元にある数千円の現金を、次のギャンブルで一発逆転するための軍資金に回す心理が働きます。
日本の公的医療保険制度によって窓口負担は3割に抑えられているとはいえ、虫歯が進行して根管治療や被せ物の作製が必要になると、まとまった費用が必要になります。
お金がないことを理由に受診を先延ばしにしているうちに、虫歯はエナメル質から象牙質、さらには歯の神経へと達し、耐え難い激痛へと変わります。
それでも放置を続けると、最終的には歯の根元しか残らない状態になり、抜歯せざるを得ない段階まで悪化します。
このように、経済的な余裕のなさが、適切な医療を受ける機会を完全に奪う結果となります。
まとめ
虫歯とギャンブルには、前述したようにさまざまな関係性があります。
結論からいうと、ギャンブルは虫歯のリスクを高め、口腔環境を壊滅的な状況に追い込む可能性のあるものです。
そのため、趣味でギャンブルに興じる場合は適度な頻度や金額にとどめ、生活やセルフケア、歯科クリニックの受診などに影響を及ぼさないことを意識しなければいけません。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。