虫歯治療を行う際は、基本的に麻酔を使用します。
よほど初期の虫歯でなければ、麻酔を使わないということはありません。
また麻酔の効果は、治療後徐々に切れていくものですが、場合によってはなかなか切れないこともあります。
今回はこのようなケースの原因と対処法について解説します。
虫歯治療後になかなか麻酔が切れない原因と対処法4選
治療から何時間経過しても麻酔が切れないという場合、以下の原因が考えられます。
・伝達麻酔の使用による長時間の持続
・個人の体質や体調による代謝能力の低下
・注射針や薬剤による神経への一時的な刺激
・治療への恐怖心や極度の精神的緊張
各項目の詳細と対処法をあわせて説明します。
伝達麻酔の使用による長時間の持続
下の奥歯や親知らずの抜歯など、骨が厚く麻酔が効きにくい部位では、神経の根元に直接効かせる伝達麻酔が使用されます。
一般的な小さな虫歯治療の浸潤麻酔が2〜3時間で切れるのに対し、伝達麻酔は広範囲に作用するため、切れるまでに4〜6時間あるいはそれ以上の時間を要することがあります。
そのため、治療を受ける際にはあらかじめ歯科医師に“今日はどの種類の麻酔を使い、何時間ほど効果が持続するのか”を事前に確認しておくことが大切です。
事前に伝達麻酔だと分かっていれば、帰宅後もしばらく感覚がなくても焦る必要はありません。
ただし麻酔が効いている間は、唇や頬の内側を誤って強く噛んでしまい、大きな口内炎や傷を作ってしまうリスクが非常に高くなります。
完全に感覚が戻るまでは食事を絶対に避け、水分補給をする際もストローを使用するなどして、火傷や飲みこぼしに注意しながら過ごすことが確実な身の守り方となります。
個人の体質や体調による代謝能力の低下
体内に入った麻酔薬は血管を通じて全身に巡り、分解された後に尿として体の外へ排出されるため、麻酔が切れる時間は個人の代謝スピードや当日の体調に大きく左右されます。
生まれつきアルコールや薬物の分解能力が低い体質の方、普段から肝機能が低下している方は分解に時間がかかります。
さらに寝不足や過労による体力の低下、極度の冷え性、運動不足などで全身の血液循環が悪くなっていると、麻酔が注入された部位に薬が長く留まり続けてしまいます。
この場合の対策としては、常温の水やノンカフェインの温かいお茶を少しずつ多めに摂取し、尿の排出を促して代謝を助ける法が挙げられます。
ただし、感覚がない状態での飲酒や入浴は体調を悪化させるため避けてください。
また過去の治療でも麻酔が長引きやすかった経験がある場合は、事前に薬が残りやすい体質であることを歯科医師に伝えておきましょう。
こうすることで、麻酔薬の量を必要最低限に調整してもらうなどの配慮を受けられます。
注射針や薬剤による神経への一時的な刺激
虫歯治療時の麻酔注射は、目視できない歯肉の内部にある神経の近くを狙って打たれます。
そのため、注射針が細い神経の線維に直接触れたりかすめたりすることや、注入された麻酔薬の圧力によって神経が一時的に圧迫されることがあります。
これによって神経の表面に軽い炎症や刺激が生じると、麻酔の薬液自体が体内で完全に分解・消失した後であっても、神経そのものが過敏になります。
その結果、まるで麻酔がまだ効いているかのようなしびれや鈍麻感が長く続いてしまいます。
これは医療ミスではなく、解剖学的な個体差で起こり得る現象です。
数時間~1日程度で自然に和らぐ一時的な神経過敏であれば、患部を指で強く押したり揉んだりせずに安静に保つことが最善の対策です。
刺激を与えると、炎症が悪化して感覚の異常が長引くおそれがあります。
翌日になっても感覚が戻らない場合やピリピリとした痛みが伴う場合は、自己判断をせずに必ず治療を受けた歯科クリニックへ早めに連絡しましょう。
神経の回復を助けるビタミンB12製剤の内服薬を処方してもらうなど、初期対応を迅速に受けることが大切です。
治療への恐怖心や極度の精神的緊張
虫歯治療に対して「痛いのではないか」「怖い」という強い恐怖心や不安を抱えていると、人間の体は強いストレスを感じて交感神経が過剰に優位になります。
交感神経が優位になると全身の血管が収縮して血流が著しく悪化するため、血行不良によって麻酔薬の成分がその場に停滞し、麻酔の効果が異常に長引くことになります。
また精神的な緊張が強すぎると脳が感覚に対して非常に過敏になり、治療が終わった後も「まだ痺れているのではないか」という心理的な思い込みが生まれます。
こちらは実際以上に、感覚の麻痺を強く感じ続けてしまうことにつながります。
これを和らげるためには、治療前に自分の不安な気持ちを歯科医師に正直に伝えておくことが大切です。
現代の歯科クリニックでは、表面麻酔を併用して注射自体の痛みを無くしたり、リラックスできる空間づくりや丁寧な声掛けを行ったりといった対応をしてくれます。
治療中や治療後は、意識的にゆっくりと深呼吸を繰り返し、自宅では音楽や映画を見て口元への意識を他の事柄に逸らすことが緊張の緩和に効果的です。
まとめ
虫歯治療後、なかなか麻酔が切れなかった場合、多くの患者さんは焦りが生まれると思います。
しかし、麻酔の効果が一生切れないということはありませんので、安心してください。
また少しでも効果が切れないリスクを減らしたいのであれば、事前に歯科医師としっかりコミュニケーションを取っておくべきです。
そうすれば、大きなトラブルのリスクは限りなくゼロに近づきます。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。