虫歯は誰もがおそれる歯の疾患であり、ここから全身疾患につながることもあります。
また特に男性の場合、他にも薄毛というとても怖い現象が存在します。
これらは一見無関係のように見えますが、実際はそうではありません。
今回は、虫歯と薄毛がどのように関係しているのかについて解説します。
虫歯と薄毛の関係性4選
虫歯と薄毛には、知られざる以下のような関係性があります。
・栄養不足によるヘアサイクルへの悪影響
・噛み合わせのズレによる血行不良
・自律神経の乱れと慢性的なストレス
・慢性的な炎症によるヘアサイクルの阻害
各項目について詳しく説明します。
栄養不足によるヘアサイクルへの悪影響
虫歯が進行して歯に強い痛みが生じると、私たちは無意識のうちに硬い食べ物や咀嚼が必要な食材を避けるようになります。
その結果、毎日の食事がうどんやおかゆ、ゼリー状の食品、あるいはパンやスナック菓子といった柔らかい炭水化物ばかりに偏り、栄養バランスが乱れがちになります。
しかし健康な髪の毛を生成し、正常なヘアサイクルを維持するためには、髪の主成分であるケラチンの元となるタンパク質や、髪の合成に不可欠なミネラル類、ビタミン群が欠かせません。
人体は食事から摂取した栄養素を、まず生命維持に直結する心臓や脳、内臓などの重要臓器へ優先的に配分する仕組みを持っています。
そのため、生命維持において直接的な関係が薄い頭皮や毛根への栄養供給は、どうしても後回しにされてしまいます。
虫歯による痛みで咀嚼が十分にできない状態が続くと、慢性的かつ深刻な栄養不足に陥り、毛母細胞の活動が著しく停滞してしまいます。
これにより、髪の毛が太く長く育つ前に成長を止めてしまう休止期脱毛が引き起こされ、髪全体のボリューム低下や薄毛の進行を招く大きな原因になります。
健康で豊かな髪を育むための土台を作るには、虫歯を早期に治療し、何でもしっかりとバランス良く噛んで食べられる健やかな口腔環境を維持することが極めて重要です。
噛み合わせのズレによる血行不良
虫歯による激しい痛みを避けるために、片側の歯だけで食べ物を噛むクセがついてしまうと、顎の関節やその周囲にある筋肉のバランスが左右で著しく崩れてしまいます。
特に顎を動かす咬筋や、頭の横に位置する側頭筋などの咀嚼筋が過剰に緊張して硬くなると、そのコリは次第に首や肩、そして頭皮全体へと広がっていきます。
頭皮には非常に細い毛細血管が網の目のように張り巡らされていますが、周辺の筋肉が慢性的に緊張して硬化すると、これらの血管が物理的に圧迫されて血流が著しく悪化します。
髪の毛の成長は、毛根にある毛母細胞が血液から酸素や栄養素を受け取って細胞分裂を繰り返すことで行われているため、血行不良は髪にとって致命的な問題となります。
血液の巡りが滞ると、せっかく摂取した大切な栄養が毛根まで届かなくなり、毛髪の成長期が短縮され、細く抜けやすい未熟な髪ばかりが増えてしまいます。
さらに、噛み合わせのズレは頭蓋骨の微細な歪みを引き起こし、頭皮の突っ張りや硬化をさらに悪化させるという悪循環を生み出します。
このように、虫歯という口腔内の局所的な痛みが原因で発生した噛み合わせの狂いは、最終的に頭皮の深刻な血行不良を招き、薄毛を進行させる直接的な引き金となってしまいます。
自律神経の乱れと慢性的なストレス
虫歯が引き起こす継続的な痛みや、口の中の不快感、そして「早く歯医者に行かなければならない」という焦燥感は、脳にとって慢性的なストレスとして日々蓄積されていきます。
人間の体は強いストレスを感じると、交感神経が過剰に優位になり、全身の機能をコントロールしている自律神経のバランスが大きく乱れてしまいます。
交感神経が優位な状態が続くと、血管を収縮させるアドレナリンなどのホルモンが過剰に分泌され、全身の毛細血管が収縮して頭皮への血流が著しく低下します。
また自律神経の乱れは頭皮の皮脂分泌のコントロール機能にも悪影響を及ぼし、皮脂の過剰分泌を招いて頭皮環境を悪化させ、毛穴の詰まりや炎症を引き起こす原因になります。
さらに、虫歯の痛みや不快感は睡眠の質を著しく低下させます。
髪の毛の成長や毛母細胞の修復に不可欠な成長ホルモンは、夜間の深い睡眠中にもっとも多く分泌されるため、睡眠不足が続くと髪の毛の健やかな毛周期が阻害されてしまいます。
ストレスによる血行不良、頭皮環境の悪化、あるいは睡眠の質の低下が重なることで、毛根が正常に機能しなくなり、結果として抜け毛の増加や薄毛の加速を招くことになります。
慢性的な炎症によるヘアサイクルの阻害
重度の虫歯を治療せずに放置していると、虫歯菌などの細菌が歯の内部にある神経を壊死させ、さらに歯の根の先端からあごの骨の内部へと深く侵入していきます。
これにより、歯根の周囲に膿が溜まる根尖性歯周炎などの慢性的な感染症や激しい炎症が引き起こされます。
口腔内で発生したこの慢性的な炎症は、単に口の中だけの問題にとどまらず、血管を通じて全身の健康状態に重大な悪影響を及ぼすことが分かっています。
炎症部位からは炎症性サイトカインと呼ばれる物質が大量に放出され、血液に乗って全身へと巡っていきます。
この炎症性物質が毛包にまで到達すると、髪の毛の成長をコントロールする毛乳頭細胞や、実際に髪を作る毛母細胞を攻撃したり、その正常な細胞分裂を著しく阻害したりします。
その結果、本来であれば数年間続くはずの髪の成長期が強制的に短縮され、髪が十分に太く強く育ちきる前に抜け落ちてしまう現象が起こります。
このように、たった1本の虫歯であってもその根元で発生した慢性的かつ強力な炎症が血液を介して頭皮にまで波及することで、深刻な薄毛を引き起こす大きな要因となり得ます。
まとめ
冒頭でも触れた通り、虫歯は全身疾患を引き起こす可能性もある疾患であり、もはや口腔疾患の域を超えていると言えます。
また疾患以外にも、薄毛のような精神的ダメージの大きいトラブルにつながるおそれがあります。
そのため普段から虫歯のケアを行うことはもちろん、定期検診に通い、本格的な治療が必要になる前に進行を食い止めることが大切です。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。