虫歯治療中は、口内の洗浄などを行うため、大量の水が使用されます。
しかし、この水が喉の奥に溜まると、溺れるような息苦しさや不快感を覚えやすくなります。
特に虫歯治療が苦手な方は、かなりのストレスになるでしょう。
今回はこちらのストレスを軽減し、快適に治療を受けるための対策について解説します。
虫歯治療中、口に水が溜まる不快感への対策4選
虫歯治療中、口内に水が溜まることの不快感への対策としては、主に以下のことが挙げられます。
・手を挙げるサインを事前に決めておく
・顎を引いて頭を少し横に傾ける
・完全な鼻呼吸を意識してリラックスする
・ラバーダムや特別な配慮を相談する
各項目について詳しく説明します。
手を挙げるサインを事前に決めておく
治療中に口の中に水が溜まって苦しいと感じたとき、無理に我慢を続けると過換気症候群やパニックを引き起こすおそれがあります。
そのため、治療が始まる前に“水が溜まって苦しいときは左手を挙げて合図する”というルールを歯科医師や歯科衛生士と共有しておくことが極めて有効です。
事前に明確なサインを決めておけば、患者さん自身が「いつでも治療を止められる」という安心感を持てるようになります。
この安心感は、治療時の緊張やストレスを和らげる効果もあります。
歯科クリニック側も、患者さんが手を挙げた瞬間に器具を止め、バキュームで速やかに水を吸引してくれるため、不快な時間を最小限に抑えられます。
水が喉に流れそうになってから慌てて動くと、治療器具が口内を傷つける原因になり非常に危険です。
言葉を発せない治療中だからこそ、視覚的なサインを活用しましょう。
「少しでも水が溜まったら遠慮なく手を挙げてください」と言ってくれる歯科クリニックも多いため、カウンセリングや治療開始の直前に、苦手意識を伝えておくことが大切です。
顎を引いて頭を少し横に傾ける
治療中の姿勢や首の角度を少し工夫するだけで、水が喉の奥へ流れ込むのを防ぐことができます。
シートに横たわっている際、無意識に顎が上がってしまうと、喉の通り道が完全に開いてしまい、水や唾液がダイレクトに喉の奥へ流れやすくなります。
そのため、意識的に少し顎を引く姿勢を保つことが基本の対策になります。
さらに効果的なのが、顔や頭をわずかに横へ傾ける方法です。
顔を横に向けることで、注入された水が喉の奥ではなく、頬の筋肉の内側の隙間に一時的に溜まるようになります。
これにより、気道へ水が侵入してむせるリスクを大幅に下げられます。
溜まった水が喉に触れない位置に留まるため、バキュームでの吸引が格段にスムーズになります。
ただし治療の部位によっては医師が頭の位置を指定することもあるため、自己判断で急に動かすのではなく、事前に確認し、無理のない範囲で調整してもらうのが賢明です。
完全な鼻呼吸を意識してリラックスする
口を開けた状態での治療中は、口呼吸になりがちです。
しかし、口で息を吸おうとすると、口内に溜まった水を一緒に気管へと吸い込んでしまい、激しくむせたり溺れたような感覚に陥ったりします。
これを防ぐためには、治療が始まったら口の機能は完全に休ませ、鼻だけで息を吸って鼻だけで吐くという完全な鼻呼吸に集中することが重要です。
鼻呼吸を安定させるコツは、あらかじめ舌のポジションを意識することです。
舌の奥の付け根を上顎の奥に軽く押し当てるようにすると、口の空間と喉の奥が一時的に遮断され、即席の防波堤のような役割を果たしてくれます。
これにより、水が喉に流れ込むのを防ぎつつ、鼻からの空気の通り道をしっかりと確保できます。
また虫歯治療への恐怖心や緊張が強いと、交感神経が優位になって唾液の分泌量が増え、さらに不快感が増すという悪循環に陥ります。
鼻から深く吸って鼻から細く長く吐き出す腹式呼吸を意識すると、副交感神経が刺激されてリラックス状態を導けます。
呼吸をコントロールすることが、結果として口の水分コントロールにもつながります。
ラバーダムや特別な配慮を相談する
どうしても水が溜まる感覚に耐えられない場合は、歯科クリニックが保有する特殊な器具や治療環境の調整を利用させてもらいましょう。
代表的なものが、ラバーダムと呼ばれるゴム製のシートです。
これは治療する歯だけをシートの穴から露出させ、それ以外の口腔内を完全に覆い隠す器具です。
ラバーダムを使用すると、治療で使用する水が口の奥に溜まることがなくなり、すべてシートの上を流れて外へ排出されるか、手前でバキューム吸引できます。
患者さんは治療中、お口の中に水が溜まる不快感から完全に解放され、喉に水が落ちてくる心配もありません。
主に根管治療などで使われますが、希望すれば対応してくれることもあります。
また、バキュームの吸引力が弱いと感じる場合は、アシスタントが常時付き添って2本体制で水を吸う拡大吸引を要望することも可能です。
さらに、治療器具から出る水の量をあらかじめ少なく調整してもらうアプローチもあります。
こうした対応は医院の設備や治療内容によるため、予約時や事前の問診で「水の不快感が非常に強い」と明確に伝えて相談してみましょう。
まとめ
虫歯治療は、基本的に1回の通院で終わることはありません。
ある程度進行が見られる場合、最低でも2~3回は治療を受ける必要があります。
そのため、スムーズな治療を妨げるような違和感や不快感については、早い段階で解決策を見つけておくべきです。
もちろんその際には、歯科医師や歯科衛生士の協力を仰いでも構いません。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。