一般的に生野菜は清掃性食品と呼ばれ、虫歯予防に効果的とされています。
こちらは食べることにより、線維によって直接的に歯の汚れがある程度除去されるというものです。
しかし食べ方や種類、組み合わせによっては、意外にも虫歯のリスクを高める要因となる場合があります。
今回はその主な原因について解説します。
生野菜の虫歯リスクを高める原因4選
生野菜の虫歯リスクが高まってしまう原因としては、主に以下のことが挙げられます。
・ドレッシングや調味料
・潜在的な糖質
・繊維質の停滞
・酸性野菜による酸蝕症
各項目について詳しく説明します。
ドレッシングや調味料
生野菜自体は低糖質ですが、味付けに欠かせないドレッシングが落とし穴となります。
市販のドレッシング特にノンオイルタイプは、脂質を抑える代わりに果糖ぶどう糖液糖や砂糖などの糖分を大量に加えてコクを出していることが一般的です。
これらは分子が小さく、虫歯菌が分解して酸を作るスピードが非常に速いため、プラークの増殖をダイレクトに助長します。
さらに、ドレッシングのベースとなる酢やレモン汁は強い酸性を示します。
口の中のpHが5.5を下回ると、歯のエナメル質が溶け始める脱灰が始まりますが、生野菜時間をかけてゆっくり食べるスタイルは、歯が酸にさらされる時間を長期化させます。
またドレッシングに粘り気がある場合、歯の表面や隙間に糖分と酸が停滞しやすくなり、自浄作用が働きにくくなります。
健康のために野菜を食べているつもりが、実際には酸性糖分液を歯に塗り広げているような状態になり、エナメル質が慢性的に脆くなってしまうリスクがあります。
潜在的な糖質
野菜であれば、何でも低糖質だと思い込むのは危険です。
生で食べられることも多いニンジンやタマネギ、パプリカやトウモロコシなどは、野菜の中でも炭水化物の含有量が比較的高い傾向にあります。
特に近年の農業技術により開発された高糖度トマトやフルーツ人参などは、果物に近いレベルの糖分を含んでいます。
これらの糖質は、噛むほどに唾液中の酵素によって分解され、虫歯菌の餌となる糖へと変化します。
特に生野菜は加熱調理されたものに比べて硬いため、咀嚼の過程で歯の噛み合わせの溝に細かく砕かれた食べカスが押し込まれやすい性質があります。
トウモロコシなどのデンプン質が豊富な野菜が歯の溝に詰まり、そのまま放置されると、唾液による洗浄が届かない場所で持続的に酸が放出され続けます。
「野菜だから食後の歯磨きは適当でいい」という油断がもっとも危険であり、特に就寝前にこれらの野菜を摂取してケアを怠ると、一晩中菌に栄養を与え続けることになります。
繊維質の停滞
生野菜の最大のメリットである豊富な食物繊維は、時として虫歯のリスク因子に変わります。
セロリやレタス、水菜やゴボウのサラダなど、繊維の強い生野菜を噛むと、歯と歯の間の狭い隙間に繊維が文字通り刺さるような形で残留することがあります。
これを放置すると、繊維そのものが腐敗するわけではありませんが、その繊維が足場となり、周囲に細菌や他の食事に含まれる糖分を溜め込む構造物を作り上げてしまいます。
歯間に詰まった繊維は、うがい程度ではまず除去できません。
そのまま数時間が経過すると、繊維の隙間で繁殖した細菌が濃縮された酸を出し、歯の隣接面から虫歯を進行させます。
隣接面の虫歯は外見からは非常に見つけにくく、痛みが出たときには神経まで達していることも少なくありません。
生野菜を好んで食べる方は、咀嚼回数が増えて唾液が出るという利点がある反面、物理的な詰まりが発生するリスクが常に付きまといます。
酸性野菜による酸蝕症
トマトやピクルス、あるいは酢を多用したマリネ風の生野菜料理は、口の中を強い酸性状態に傾けます。
通常健康な人の唾液には、酸を中和して溶け出したミネラルを歯に戻す再石灰化の力がありますが、これには時間がかかります。
生野菜をメインとした食事で、かつ時間をかけて食べ続けることが習慣化していると、唾液の中和が追いつかず、歯の表面のエナメル質が常にやわらかい状態になってしまいます。
エナメル質が軟化した状態で、繊維の硬い生野菜をバリバリと強く噛みしめると、歯の表面が物理的に摩耗しやすくなります。
これを咬耗や摩耗と呼びますが、削れて薄くなったエナメル質は虫歯菌の出す酸への抵抗力が極端に低くなります。
また酸性の強い野菜を摂取した直後に、硬い毛の歯ブラシで強く磨くことも、やわらかくなったエナメル質を削り取ってしまう原因となります。
健康志向が強い方ほど、酸性の野菜を多く摂り、すぐに磨いてしまうという“良かれと思った行動”が裏目に出て、虫歯のリスクを高めてしまうというパラドックスが生じやすいです。
まとめ
冒頭でも触れた通り、生野菜は虫歯を予防するにあたって積極的に採り入れるべき食材です。
しかし「生野菜だから大丈夫」という慢心が、虫歯のリスクを高めてしまうことだけは避けなければいけません。
もちろん、他の食材も種類や食べ方によって虫歯のリスクが大きく変わってくるため、日々情報をアップデートしながら正しい虫歯予防を実践しましょう。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。