歯周病は、万病のもととなるおそろしい疾患です。
全身疾患によって命の危機にさらされた方が、元をたどれば歯周病が原因だったというのは珍しい話ではありません。
そのため、歯周病予防は基本のブラッシングなどとあわせて、複合的に実践すべきです。
今回は、即日始められる歯周病対策をいくつか紹介します。
即日始められる歯周病対策4選
以下の歯周病対策は、お金をかけずに今日からでもすぐに始められます。
・あいうべ体操
・生活リズムの改善と質の高い睡眠
・重曹うがい
・公的な歯科検診
各項目について詳しく説明します。
あいうべ体操
口の中が乾燥することは、歯周病菌にとってボーナスタイムのようなものです。
本来口内は唾液で潤っているべきですが、口呼吸の癖があると、唾液が蒸発してしまい、バリア機能が失われます。
これを防ぎ、本来の鼻呼吸を習慣化させるトレーニングが、無料でできる“あいうべ体操”です。
やり方は至ってシンプルで、以下の4つの動作を全力で行います。
① 「あー」と口を大きく開く
② 「いー」と口を横に思い切り広げる
③ 「うー」と口を強く前に突き出す
④ 「べー」と舌を顎の先に向かって突き出す
これを1セットとし、1日30セットを目安に行います。
声は出しても出さなくても構いません。
この運動により、口の周りの筋肉や、舌を支える筋肉が鍛えられます。
実は、口呼吸の方の多くは舌の位置が下がっていますが、このトレーニングを続けることで、舌が上顎にピタッと吸い付く正しい位置に収まるようになります。
すると、寝ている間も自然と口が閉じ、鼻呼吸が維持されるようになります。
口内の湿度を保つことは、高価な殺菌剤を使うよりも遥かに持続的で強力な歯周病予防策になります。
生活リズムの改善と質の高い睡眠
歯周病は“沈黙の病(サイレント・ディジーズ)”とも呼ばれる生活習慣病の一種であり、身体全体の免疫力と密接に関係しています。
どれほど一生懸命ブラッシングをしても、極度の睡眠不足や不摂生が続くと、体の防衛ラインが崩れ、歯周病菌の攻撃を許してしまいます。
特に疲れが溜まっている時に歯茎が疼く、浮いた感じがするという経験がある方は、身体全体の抵抗力が落ち、歯茎の炎症を抑えきれなくなっている兆候です。
お金をかけずに免疫力を最大化する方法は、毎日決まった時間に就寝し、7時間程度の質の高い睡眠を確保することです。
睡眠中には成長ホルモンが分泌され、ダメージを受けた歯茎の組織修復が行われます。
また夜更かしをやめて規則正しい生活を送ることで、自律神経のバランスが整い、唾液の分泌量も正常に保たれるようになります。
ストレスを溜め込まないことも重要で、リラックスした状態は副交感神経を優位にし、サラサラとした質の良い唾液を増やしてくれます。
しっかり寝るという当たり前の習慣こそが、実はもっとも効果的で、一円もかからない最強の歯肉炎・歯周病対策です。
重曹うがい
食事をした直後の口内は、細菌が糖分を分解して酸を作るため、酸性に傾いています。
この状態は歯の表面のエナメル質をやわらかくし、歯周病菌が活動しやすくなる環境をつくってしまいます。
そこで、非常に安価でできる重曹うがいが有効です。
重曹は弱アルカリ性の性質を持っていて、酸性に傾いた口内を瞬時に中和する働きがあります。
作り方は、500mlのペットボトルの水に対して、食用の重曹を小さじ半分程度溶かすだけです。
食後、この重曹水で30秒ほどブクブクうがいをします。
これだけで、歯の再石灰化を助けるとともに、歯周病菌の増殖を抑制する環境をつくることができます。
また重曹にはタンパク質を分解する性質があるため、歯に付着したネバネバしたプラークを分解しやすくし、その後のブラッシングの効率を格段に高めてくれます。
市販の洗口液のような強い刺激もなく、食品添加物としても使われる重曹は安全性が高いのも魅力です。
キッチンにある身近なものを賢く利用することで、プロレベルの口内環境管理が可能になります。
公的な歯科検診
「お金をかけたくない」と考えるなら、もっとも避けるべきは重症化してからの通院です。
歯周病が進行して手術やインプラントが必要になれば、数十万~数百万の費用がかかります。
これを防ぐための最大の節約術は、自治体が実施している成人歯科健康診査を徹底活用することです。
多くの市区町村では、40歳・50歳・60歳といった特定の年齢の方に、無料で歯科検診を受けられるクーポンを配布しています。
これを単なる“お知らせ”だと思って捨ててはいけません。
プロの目で歯周ポケットの深さを測ってもらい、自分では届かない位置の歯石がないかを確認してもらうことは、将来の高額な治療費に対する最高の保険になります。
もし異常が見つかっても、初期段階であれば保険診療の範囲内で、数回のクリーニングで完治させることができます。
自身が住む自治体のWebサイトをチェックし、受けられる無料サービスがないか確認してみてください。
まとめ
歯周病対策と聞くと、ほとんどの方は丁寧なブラッシングを想像するかと思います。
もちろんそれも間違いではありませんが、前述したような簡単にできる対策を組み合わせることで、より発症のリスクは抑えられます。
またより高次元の歯周病対策を実践したいという方は、歯科クリニックで具体的なアドバイスを受けることをおすすめします。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。