虫歯を発症している方は、日常生活において不便な場面がとても多くなります。
歯の痛みが強ければ、当然食事には影響が出ますし、重度の虫歯の場合は満足に睡眠もとれない可能性があります。
また普段楽器を演奏する方も、虫歯が邪魔をすることが考えられます。
今回は、虫歯が楽器の演奏に与える悪影響について解説します。
虫歯が管楽器の演奏に与える悪影響
管楽器は、息を吹き込んで管の中の空気柱を振動させることで音を出す楽器です。
フルートやクラリネット、トランペットやトロンボーンなどが該当します。
これらの楽器を演奏するとき、虫歯があると以下のような影響が出ることが考えられます。
・アンブシュアの不安定化
・集中力の低下
・マウスピースの衛生面の悪化
・虫歯治療後の変化
各項目について詳しく説明します。
アンブシュアの不安定化
虫歯がある状態で管楽器を演奏すると、アンブシュアが不安定になることが考えられます。
アンブシュアは、管楽器を演奏する際マウスピースに当たる唇の形や口周りの筋肉の使い方、舌や顎の状態などを総合して指す言葉です。
この口の状態によって、音程や音色、音域などをコントロールするため、管楽器の演奏においては非常に重要かつ基本的な技術です。
金管楽器やシングルリード式の木管楽器は、前歯と唇でマウスピースを支えるため、虫歯による歯の痛みやぐらつきなどがあると、アンブシュアが不安定になります。
またそれによって思い通りの音が出せず、ストレスが溜まったり気分が落ち込んでしまったりすることがあります。
もちろん、アンブシュアでは唇の筋肉を使ったり、頬を膨らませないよう口内に力を入れたりしなければいけません。
このような動きが、虫歯の痛みを誘発することも考えられます。
集中力の低下
集中力が低下することも、虫歯が管楽器の演奏に与える悪影響です。
管楽器の演奏中は、しっかり音を出すために集中しなければいけません。
特にオーケストラなどで演奏する場合、一人がミスをすると全体の調和が取れなくなるため、より集中することが求められます。
しかし、虫歯がある場合は演奏中に痛みが生じ、集中力が著しく低下します。
中でも神経にまで達するような虫歯は、演奏ができないどころか何もせず座っていることすらままならない可能性があります。
そのため、オーケストラのように複数人で演奏する形式には基本的に参加できません。
マウスピースの衛生面の悪化
管楽器を演奏する際は、口でマウスピースを支えなければいけません。
しかし、虫歯を発症している状態だと、こちらのマウスピースが不衛生になることがあります。
虫歯は虫歯菌という細菌によって引き起こされるものであり、発症している状態でマウスピースに口をつけると、細菌が付着しやすくなります。
またこのようなマウスピースは、楽器の劣化につながり、虫歯が完治した後も再度口内環境を悪化させる原因になり得ます。
虫歯治療後の変化
仮に虫歯を治療したとしても、一度虫歯を発症すると管楽器の演奏に悪影響が及ぶ可能性があります。
なぜなら、虫歯を発症した後は以前と噛み合わせが変わってしまうからです。
虫歯治療では、患部の歯を削って詰め物や被せ物などの補綴物を装着しますが、これによって微妙にアンブシュアが狂い、音色や吹き心地が変わってしまうことが考えられます。
虫歯が弦楽器の演奏に与える悪影響
弦楽器は、張られた弦を振動させて音を出す楽器であり、代表的なものにはバイオリンやチェロなどがあります。
これらは管楽器とは違い、虫歯と直接的な関係はないように思えますが、実際は虫歯があることで演奏に以下のようなデメリットを生じさせます。
・顎関節への影響
・食いしばり
各項目について詳しく説明します。
顎関節への影響
バイオリンなどの弦楽器は、楽器を顎で挟んで演奏します。
そのため、顎関節に負担がかかることがあります。
ひどい場合は、顎関節症を発症し、顎の開閉障害や異音などの症状に悩まされることも考えられます。
また虫歯による噛み合わせの悪化も、顎関節症を発症・悪化させる原因になることがあります。
つまり、虫歯がある状態で弦楽器を演奏すると、顎関節症のリスクが極めて高くなるということです。
食いしばり
弦楽器を演奏する際は、集中して演奏するあまり、無意識のうちに歯を食いしばる癖がある方もいます。
虫歯を発症している場合、食いしばりによる痛みで演奏に集中できなくなることが考えられます。
またこのようなデメリットは楽器を顎で挟むバイオリンなどの弦楽器だけでなく、ギターやベースなど指やピックで弦を弾く撥弦楽器にも当てはまることです。
まとめ
深刻な虫歯は、プロ・アマチュアを問わず楽器奏者にとって致命的な問題になりかねません。
そのため、日頃から丁寧なセルフケアを心掛け、定期的に歯科クリニックで検診を受けることが推奨されます。
ちなみに管楽器奏者の方が虫歯を発症した場合、歯科医師に相談すれば、アンブシュアを考慮した詰め物や被せ物の形を検討してもらえる可能性があります。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。