虫歯予防に関することは、一つでも多く知っておいて損はありません。
知識が豊富であればあるほど、適切に虫歯を予防しやすくなります。
また虫歯を予防できるということは、歯周病などの関連疾患や全身疾患も予防しやすくなるということを意味します。
今回は、虫歯予防に関する深掘りした疑問について解説します。
航空性歯痛の予防法は?
飛行機の搭乗中やダイビング中に、それまで痛まなかった歯が突然激しく痛み出す現象を航空性歯痛(気圧性歯痛)と呼びます。
これは、気圧の低下に伴って、歯の内部にある歯髄腔という狭い空洞の空気が膨張し、神経を内側から強く圧迫するために起こります。
健康な歯であれば、空気が抜けるため問題ありません。
しかし過去の治療で神経を抜いて根の中に空洞が残っている歯や、治療途中の虫歯、あるいは詰め物の下にできた目に見えない小さな虫歯があると、密閉された空間で気圧の変化をダイレクトに受けてしまいます。
このようなトラブルを予防する最大の方法は、旅行や出張の前に歯科クリニックで詰め物の内部の空洞化をチェックしてもらうことです。
また飛行機内で万が一痛みが起きてしまった場合は、口の中を冷たいお水で冷やすことで、空気の体積膨張を一時的に抑え、神経への圧迫を和らげる応急処置が有効です。
舌の運動をサボると奥歯が虫歯になりやすくなる?
舌の筋力と虫歯予防には、一見関係がなさそうで非常に深いつながりがあります。
健康な状態では、舌は上顎の裏側にピタッと吸い付く位置にあります。
しかし、加齢やスマホの長時間使用による猫背などで舌の筋肉が衰えると、舌が下に落ちる低位舌という状態になります。
舌の位置が下がると、本来は舌の自然な動きによって行われていた、奥歯の裏側の食べカスを削ぎ落とす自浄作用が完全に機能しなくなります。
さらに低位舌は口呼吸を誘発するため、口の中が常に乾燥し、虫歯菌と戦うための唾液が奥歯の周りから干からびてしまいます。
つまり舌の運動を怠ると、物理的な掃除が行き届かない、唾液のバリアが切れるというダブルパンチで特に下の奥歯の裏側に急激にプラークが溜まりやすくなるということです。
日頃から上顎に舌を押し当てる意識を持つことや、舌を前後左右に動かす体操をすることが、実はとても効果的な奥歯の虫歯予防になります。
温泉で歯が溶けて虫歯のリスクが上がるって本当?
温泉街に住む方や、頻繁に温泉地を訪れるお風呂好きな方にとって、非常にマニアックですが見過ごせないのが泉質による歯への影響です。
結論から言うと、pH値が2.0前後の強酸性泉や硫黄泉に分類される温泉は、歯の表面を保護しているエナメル質を化学的に溶かしてしまうリスクを秘めています。
歯の表面にあるもっとも硬い組織であるエナメル質は、口の中のpH値が5.5以下になると溶け始めます。
強酸性の温泉水を口に含んだり、温泉の湯気が充満した空間に長時間滞在して呼吸を続けたりすると、口腔内が日常ではあり得ないレベルの酸性環境に晒されます。
これにより歯がやわらかくなり、虫歯菌が出す酸に対して非常に脆くなってしまうのです。
温泉による歯のダメージを防ぐための予防策は、とてもシンプルです。
酸性の温泉に入った後は、必ず通常の水道水やお茶で口をしっかりとゆすぎ、酸をリセットすることです。
また、温泉に入った直後は歯が一時的にやわらかくなっているため、30分ほど時間を空けてからブラッシングをするのが、エナメル質を傷つけないための鉄則です。
チョコレートの主成分は虫歯菌を無力化する?
“チョコレートを食べると虫歯になる”というのは常識ですが、その原因はチョコに大量に含まれる砂糖であって、原料であるカカオマス自体には、強力な虫歯予防効果があります。
カカオマスに含まれる特有のポリフェノールや脂肪成分には、虫歯菌が歯の表面に付着する際に作り出すグルカンというネバネバした物質の合成を阻害する働きがあります。
つまり、虫歯菌が口の中でプラークのバリアを作って定着するのを、水際で防いでくれるということです。
さらに、カカオの成分には口の中の雑菌を抑える抗菌作用も確認されています。
この恩恵を虫歯予防に活かすためには、砂糖やミルクがほとんど含まれていない高カカオチョコレートを選ぶ必要があります。
高カカオチョコレートとは、カカオ70%以上、理想をいうと85%以上のチョコレートを指しています。
食後に高カカオチョコをひとかけらゆっくり口の中で溶かすように食べることで、口内の虫歯菌の定着率を下げることができ、ニッチながらとても効果的なアプローチになります。
まとめ
冒頭でも触れた通り、虫歯予防に関する知識は、少しでも多く持っておくに越したことはありません。
またこういったマニアックな知識については、歯科クリニックで定期検診を受けることにより、歯科医師や歯科衛生士から聞き出しやすくなります。
そのため、長い間歯科クリニックに通っていないという方は、勇気を出して定期検診を受けてみましょう。
どれだけ丁寧でも、セルフケアだけでは虫歯を予防しきれません。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。