長距離ドライバーは、毎日何100kmという距離をトラックで走行し、荷物を運ぶことを主な業務としています。
高速道路を利用し、深夜に走行するケースが一般的です。
また長距離ドライバーは、虫歯のリスクが高い職業とされています。
今回はこちらの理由について解説します。
長距離ドライバーが虫歯になりやすい理由4選
以下の理由から、長距離ドライバーは虫歯リスクが高いとされています。
・糖分を含む飲料の常用とダラダラ飲み
・不規則な食生活とブラッシングの欠如
・唾液分泌量の減少と口腔乾燥
・歯科クリニックの受診の困難
各項目について詳しく説明します。
糖分を含む飲料の常用とダラダラ飲み
長距離運転の際、眠気覚ましやリフレッシュのために缶コーヒーやエナジードリンク、スポーツドリンクなどを手元に常備するドライバーは非常に多いです。
しかし、これは口腔環境を著しく悪化させる最大の要因になります。
通常、食事や飲み物を口にすると口内は酸性に傾き、歯のエナメル質が溶け始める脱灰が起こります。
その後、時間の経過とともに唾液の緩衝作用によって口内は中性に戻り、溶け出した成分が歯に戻る再石灰化が行われます。
運転中に少しずつ糖分を含む飲み物を摂取し続けるダラダラ飲みを行うと、口内が常に酸性の状態に保たれてしまい、再石灰化の時間が確保されません。
微糖のコーヒーであっても、継続的に摂取すれば虫歯菌に餌を与え続けているのと同じ状態になります。
さらに、エナジードリンクなどの酸性度が高い飲料は直接的にエナメル質を溶かすリスクも併せ持っています。
不規則な食生活とブラッシングの欠如
長距離ドライバーの生活は運行スケジュールや渋滞状況、荷待ちの時間に大きく左右されるため、決まった時間に食事やブラッシングを行うことが極めて困難です。
サービスエリアやパーキングエリアでの休憩時間は限られていて、次の目的地への到着時間を優先するために、食事を済ませるとすぐに運転席へ戻るのが日常となっています。
そのため、食後すぐに歯を磨くという基本的な習慣が物理的に遮断されがちです。
特に深夜から明け方にかけての走行では、夜食として高カロリーな食べ物やスナック菓子を口にすることも多いですが、この時間帯は本来身体が休息モードに入っています。
このことから唾液の分泌量が減少しているため、自浄作用がほとんど期待できません。
また車内で食事を完結させるスタイルも多く、すぐに洗面所を利用できない環境が「後でまとめて磨けばいい」という先延ばしを生みます。
唾液分泌量の減少と口腔乾燥
運転という行為そのものが引き起こす生理的変化も、虫歯リスクを高める大きな要因です。
長時間の運転は常に周囲の交通状況に気を配り、不測の事態に備える必要があるため、精神的に強い緊張状態が持続します。
このとき、自律神経のうち交感神経が優位になり、唾液の分泌が抑制されます。
交感神経が活発なときに出る唾液は、粘り気が強く量も少ないため、口内の汚れを洗い流す洗浄作用や、細菌の活動を抑える殺菌作用が著しく低下します。
また車内はエアコンの使用によって通年乾燥していて、特に冬場の暖房は空気をひどく乾燥させます。
集中して口呼吸になりやすい方や、喉の渇きを感じている状態では、歯の表面が乾いて汚れが固着しやすくなり、虫歯菌の酸から歯を守るバリア機能が失われます。
一人で運転している間は会話をする機会もほとんどなく、口の周りの筋肉を使わないことも唾液腺への刺激を減らす原因となります。
このように、自律神経の乱れと環境的な乾燥が重なることで、口の中は虫歯に対して非常に無防備な状態に陥っています。
歯科クリニックの受診の困難
職業的な特性により、長距離ドライバーは定期的な歯科検診や治療を受けることが難しいという構造的な問題があります。
多くのドライバーは帰宅時間が不規則で、休日も不定休なことが多いため、数週間前から決まった時間に予約を入れる歯科治療のスタイルとは相性が非常に悪いです。
予約を入れても仕事の都合でキャンセルせざるを得ないことが続くと、次第に通院自体を諦めてしまう傾向があります。
その結果、本来であれば初期段階で治せたはずの虫歯が放置され、深刻な状態まで悪化します。
運転中に歯の痛みを感じても、走行中であれば市販の鎮痛剤でその場をしのぐしかなく、痛みが一時的に治まると「治った」と誤解して放置を繰り返してしまいます。
また治療を開始しても、完治する前に次の仕事が入って中断してしまうケースも少なくありません。
このような時間が取れないという環境が、予防の機会を奪うだけでなく、重症化を招く最大の障壁となっています。
最終的に激痛で耐えられなくなった時には抜歯を余儀なくされることも多く、欠損した歯がさらなる噛み合わせの悪化や新たな虫歯を呼ぶ負の連鎖を招きます。
まとめ
長距離ドライバーとして働く方は、自身が他の職業と比べて虫歯になりやすいことを自覚し、セルフケアやプロフェッショナルケアの意識を高めなければいけません。
通常通り毎日を過ごしていると、急に虫歯が痛み出し、仕事に影響が出る可能性があります。
もちろん、運転をしていないときであっても、虫歯予防の意識を持つことを忘れてはいけません。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。