最近歯科クリニックに通えていない方の中には、いまだに数十年の歯科クリニックのイメージを持ったままの方もいるかと思います。
しかし、実際は過去と現在とで、歯科クリニックそのものや虫歯治療は大きな変化を遂げています。
今回は、具体的にどこが違うのかについて解説します。
過去と現在の虫歯治療の違い4選
数十年と現在の虫歯治療には、主に以下のような違いがあります。
・痛みのコントロール
・詰め物、被せ物の素材
・抜歯の基準
・予防へのシフト
各項目について詳しく説明します。
痛みのコントロール
“歯医者は痛くて怖い”というイメージを決定づけていたのは、治療そのものよりも、実は治療前の麻酔の注射でした。
昔の麻酔は、太い針を直接歯茎に刺し、歯科医師の手圧で一気に薬液を注入していました。
この時の刺入時の痛みと、薬液が組織を押し広げる圧迫痛が、患者さんに強い不快感と恐怖心を与えていたのです。
そのため麻酔を嫌がって我慢したまま削り、結局激痛を味わうという悪循環も珍しくありませんでした。
現在の歯科クリニックでは、無痛治療への取り組みが驚異的に進化しています。
まず注射針を刺す前に、粘膜にゼリー状やスプレー状の表面麻酔を塗布し、感覚を麻痺させます。
これにより、針が入る瞬間のチクッとする痛みはほぼ皆無になりました。
さらに、注入の段階ではコンピューター制御の電動麻酔器が活躍します。
人間が手動で行うとどうしても圧力にムラが出ますが、電動器機は人間が感じ取れないほどの超低速かつ一定の速度で薬液を送り込みます。
使用される針自体も、技術の進歩により33ゲージといった髪の毛ほどの極細のものが主流です。
これらの組み合わせにより、「いつの間にか麻酔が終わっていた」と感じるレベルまでストレスが軽減されています。
詰め物、被せ物の素材
昭和から平成にかけて、日本の虫歯治療を支えてきたのは銀歯でした。
銀歯は保険適用で安価に、かつ強度を確保できる優れた素材ではありますが、大きな課題がいくつかありました。
一つは見た目です。
口を開けたときに、金属が見えることに抵抗を感じる人は少なくありません。
二つ目は耐久性です。
銀歯は歯と合着しているだけなので、長年使ううちに接着剤が溶け出し、隙間から菌が侵入して二次虫歯になりやすいです。
また金属イオンが体内に溶け出すことによる金属アレルギーや、歯茎の黒ずみの原因にもなっていました。
現在は、見た目の美しさと生体親和性を兼ね備えたセラミックや、”白い金属”とも呼ばれる超高強度のジルコニアが普及しています。
これらは天然の歯に近い透明感を再現できるだけでなく、歯との接着が非常に強力です。
隙間から菌が入り込むリスクが銀歯に比べて格段に低く、結果として歯を長持ちさせることができます。
抜歯の基準
ひと昔前は、虫歯が大きく進行して歯冠が崩壊していたり、重度の歯周病で歯がグラついていたりすると、すぐに抜歯が選択されていました。
抜いた後は、隣の歯を大きく削って橋渡しをするブリッジか、取り外し式の入れ歯にするのが標準的な流れでした。
しかしブリッジは支えとなる健康な歯に過度な負担をかけ、入れ歯は噛む力が弱くなる上に違和感が強いという問題がありました。
結局抜歯した箇所がきっかけとなり、ドミノ倒しのように周囲の歯も失っていくのが、高齢者の歯の喪失パターンの典型でした。
現在の歯科医療は、安易に抜かないための努力と、抜いた後の優れた代替案の両輪で進化しています。
まず歯根端切除術や歯冠延長術といった外科的な手法を駆使し、昔なら抜いていた歯もできる限り残すことを試みます。
どうしても抜歯が避けられない場合でも、インプラントの登場により、隣の歯を一切削ることなく、自前の歯と同じような噛み心地を再現できるようになりました。
予防へのシフト
昔の歯科クリニック行く理由はたった一つ、「歯が痛くなったから」でした。
しかし痛みが出てから受診し、神経を抜き、被せ物をして終わるというスタイルでは、80歳になったときに自分の歯を20本残すことは困難でした。
再治療を繰り返すたびに削る量は増え、最終的には抜歯に行き着くからです。
また昔の歯科クリニックは“修理工場”としての役割が強く、患者さんも歯科医師も“治った(=痛くなくなった)”ことに満足し、その後のケアは無頓着なケースが多かったです。
現在の歯科治療がもっとも力を入れているのは、治療の必要がない状態を維持する予防・メンテナンスです。
北欧などの予防先進国の考え方を取り入れ、歯科衛生士によるプロフェッショナルな口腔清掃や高濃度のフッ素塗布、生活習慣のアドバイスが診療の柱となりました。
そのため“痛みがないのに歯医者に行く”という習慣は、今や健康意識の高い層では常識となっています。
まとめ
現在の虫歯治療は、簡単にいうと昔に比べ、患者さんにとっての安心感や安全性に大きく配慮されたものになっています。
そのため、数十年ぶりに歯科クリニックを訪れるという方でも、基本的には嫌な思いをせずに治療や検査を受けられる可能性が高いです。
もし不安なのであれば、しっかり歯科クリニック選びに時間をかけ、より不安や恐怖心をなくすることをおすすめします。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。