大人であってもこどもであっても、虫歯予防をしなければいけないことに変わりはありません。
生きていく限り、半永久的に虫歯予防は必要です。
しかし、可能な対策の内容については、大人と子どもで大幅に異なります。
今回は、大人と子どもの虫歯予防における違いについて解説します。
大人と子どもの虫歯予防における違い4選
大人と子どもの虫歯予防には、主に以下のような違いがあります。
・唾液の質と量をコントロールする全身的な健康管理
・二次虫歯を防ぐための補綴物ケア
・歯周病の複合的なリスク管理と根面う蝕への対応
・ライフスタイルに伴う有害リスクの排除と選択
各項目について詳しく説明します。
唾液の質と量をコントロールする全身的な健康管理
唾液は“天然の予防薬”と呼ばれ、再石灰化や自浄作用において極めて重要な役割を果たしますが、大人はこの唾液の状態を全身疾患や生活習慣の観点からコントロールできます。
子どもは成長過程にあり唾液量も豊富ですが、大人は加齢やストレス、あるいは服用している薬の副作用などによって唾液が減少するドライマウスのリスクに直面します。
このリスクに対し、能動的な対策を打てるのが大人の強みです。
例えば、大人は唾液腺マッサージを習得し、食事の前や就寝前に意図的に唾液を分泌させることができます。
また自分が服用している薬が口腔環境に与える影響を医師や薬剤師に相談し、リスクを把握した上で、医科歯科連携の視点を持ったケアが可能です。
これは自身の健康状態をトータルで把握している大人にしかできません。
さらに、大人は咀嚼の重要性を理解し、あえて歯ごたえのある食材を選んだり、一口につき30回噛んだりといった習慣を意識的に取り入れることができます。
噛む刺激は唾液分泌を促すだけでなく、脳の活性化や消化の助けにもなります。
二次虫歯を防ぐための補綴物ケア
大人の口腔内と子どものそれとの決定的な違いは、すでに治療を受けた詰め物や被せ物が存在している点です。
実は大人の虫歯の大部分は、以前治療した場所の隙間から菌が入り込む二次虫歯です。
子どもにはほとんどないこのリスクに対し、大人は特化した対策を講じることができます。
詰め物は経年劣化で必ず隙間ができますが、大人はその寿命を意識し、定期的にプロのチェックを受けるという判断ができます。
特に銀歯と歯の境目は汚れが溜まりやすく、もっとも虫歯になりやすいスポットです。
大人はワンタフトブラシを使い、鏡で境目を一点一点確認しながら精密に磨き上げるという、根気のいる作業を完結させることができます。
また詰め物が取れかかっている際のしみる、フロスが引っかかるといった微細なサインを見逃さず、痛みが出る前に受診することで、被害を最小限に食い止めることができます。
さらに、大人は「なぜその詰め物が劣化したのか」を考えることができます。
噛み合わせが強すぎるのか、歯ぎしりの癖があるのかといった原因です。
もし原因が歯ぎしりであれば、夜間にナイトガードを装着して詰め物への負担を減らすという、構造的なアプローチも選択肢に入ります。
歯周病の複合的なリスク管理と根面う蝕への対応
30代以降の大人は、虫歯だけでなく歯周病のリスクが急増しますが、これら2つの病気は密接に関係しています。
歯周病によって歯茎が下がると、本来は歯茎の中に隠れている象牙質が露出します。
象牙質は、頭の部分を覆うエナメル質よりも酸に弱く、非常に虫歯になりやすいのが特徴です。
こちらを根面う蝕と呼びますが、根面う蝕に対する高度なケアは大人にしかできません。
大人は“自分の歯茎が下がってきている”という変化を直視し、それに応じたケア用品を導入できます。
例えば露出した根っこを磨く際には、研磨剤が無配合の歯磨き粉を選び、歯を削りすぎないように優しく磨くという配慮が必要です。
エナメル質と同じ強さでゴシゴシ磨くと、根っこが削れてしまい、逆に虫歯リスクを高めてしまうからです。
こうした力の加減と適切な製品選びの組み合わせは、大人の知識と理性があってこそ成立します。
ライフスタイルに伴う有害リスクの排除と選択
大人の虫歯予防において最大の要素は、喫煙や飲酒、ストレスといった大人の生活習慣がもたらす負の影響を自らの意志で排除・軽減できることです。
タバコは毛細血管を収縮させ、お口の中の血流を阻害し、免疫力を低下させます。
これは歯周病を悪化させるだけでなく、唾液の質を低下させ、虫歯菌が繁殖しやすい環境をつくり出します。
大人は禁煙というもっとも効果的な健康投資を、自分の判断で決断することができます。
アルコールについても同様です。
晩酌を楽しみながら寝落ちしてしまうという習慣がどれほど壊滅的に虫歯リスクを高めるか、大人はそのリスクを客観的に評価します。
その上で、飲むなら寝る前に必ず磨く、酔って磨けない可能性があるなら飲む前に一度磨いておくといったリスクヘッジが可能です。
また、ストレスによる食いしばりが歯にヒビを入れ、そこから菌が侵入するというメカニズムを知れば、ナイトガードを作成するなどの具体的な対策につなげられます。
さらに大人はSNSや書籍、歯科クリニックのブログなどを通じて、常に最新の予防情報をアップデートし続けることができます。
まとめ
ここまで読んでいただいた方はお分かりの通り、大人は子どもと比べて、可能な虫歯予防の範囲という意味ではかなり有利です。
そのため、日々高度なセルフやプロケアを積極的に採り入れなければいけません。
子どもについては、親御さんが正しいブラッシングや食生活などの知識を享受し、さらに虫歯を防ぐための仕上げ磨きや定期検診といったサポートを行います。
この記事を監修した人
ふたば歯科クリニック 川崎本院
理事長 大木 烈
昭和大学歯学部卒業後、昭和大学附属病院での臨床研修を経て歯科医師としてのキャリアをスタート。現在は医療法人社団雙葉会ふたば歯科クリニックの理事長として、医院を統括する。
インプラント治療においては国際インプラント学会専門医の資格を持ち、米インディアナ大学インプラント科客員講師として海外での学術活動にも従事。矯正・補綴など多岐にわたる分野の認定資格を有し、さらに歯学博士の学位を取得するなど、臨床・研究の両面で高い専門性を発揮している。また、厚生労働省認定の臨床研修医指導医として後進の育成にも力を入れており、昭和大学歯科病院および歯学部解剖学教室にも所属し、大学との連携も継続している。
患者一人ひとりに最善の医療を届けるため、年中無休・通し診療という体制を実践。「患者様の生活の質の向上を使命とする」という姿勢のもと、予防から高度な専門治療まで幅広く対応している。